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    ナンデ

    @nanigawa43

    odtx・dcst・ユニオバ

    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

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    ナンデ

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    ユとマがダホの話をするだけ
    捏造設定あり

    あの兄弟は箱庭の山を登ってる ずっと、このボクとちっとも似ていない片割れは幼馴染みと恋をしているのだと思ってた。
    「してないよ。するわけないじゃない」
     二年ぶりにガラルに帰ってきたボクに、ユウリは何でもないことのように言う。シュートシティの一等地に建つこのカフェは、ボクがガラルに居たころには、まだ出来たてで連日行列が出来ていていつ店の前を通ってもちっとも入れそうになかったが、二年も経つと熱気も幾分落ち着いたようだ。程よく空いた空席の中でも端っこを選んで座り、足元に大きなバックパックをねじ込む。周りがチラチラとこちらを見てはすぐに手元のグラスに視線を戻しているのを横目に、ボクは姉に再度問う。
    「ボクはホップが義兄になるんだと思ってた」
    「……なんでそう思ったの?」
    「だってあんなに仲が良かったのに」
     名物だというスコーンは岩みたいに固くて大きくて、チョコレートの塊がゴロゴロ入ってる。なのにユウリはモモンジャムをたっぷり山のように盛って、もうスコーンを食べているのか砂糖を食べているのかという様相。ボクはアイスコーヒーをちびちび飲みながら、お腹も空いていないのに頼んだバゲットサンドを持て余してる。
    「仲が良いと恋しなきゃだめなの」
     口元にチョコレートを付けながら、ユウリは言う。ボクは少し考えて「そうじゃないけど」と返した。
    「そうじゃないけど、ユウリにとってもホップは特別だったじゃないか」
    「特別と恋は違うでしょ」
    「違うけど。じゃあ、何?ユウリとホップはただのおともだち?」
     カシャ……。カメラのシャッター音を模した音が斜め後ろから響いた。振り向こうとしたボクをユウリが視線で止める。チャンピオンに君臨したばかりの頃とは違う、手馴れた反応にボクは少し面食らう。
    「あーあ、明日熱愛報道出ちゃうかも」
    「はあ?」
    「熱愛報道出ちゃった後で、これマサルくんじゃないですかってファンのみんなにかばわれちゃうかも」
    「ああ、そういう」
    「覚悟しといてね」
    「いいよ、そのくらい。姉弟なんだから……」
     斜め後ろでは、女の子たちが小声で「音出ちゃった」「やばい」なんてヒソヒソやってる。やばいのは音が出てボクたちに写真を撮ってるのがバレること?どう考えても、カフェでお茶してるヒトを勝手にコソコソ撮るほうじゃないか?
    「まあ、ガラルじゃチャンピオンもジムリーダーも色違いのタチフサグマと変わりないからね。珍しいから撮るんだよ。誰かに見せたくて撮るんだ」
     あ、とユウリが大きな口を開ける。少なくとも二年前の姉は、知らない人間に隠し撮りをされていると分かっていてこんなに自由に振る舞えはしなかった。二年という時の中で、姉は環境に適応したのだ。もしくはチャンピオンとしての責務と割り切ったか。
    「マサルにとっては、ホップって何」
    「……そりゃ、幼馴染み……大事な……」
    「おともだち?」
    「ウン。うーん?いや、それよりもっと……」
    「もっと……上?」
    「上とか下とかじゃ」
    「上とか下とか、なんじゃない?」
     キャラメルマキアートをごくごく飲むユウリは、分かっていますよと言わんばかりだ。そんな表情にボクもムッとして返すと、テーブルの下でつまさきを踏まれる。
    「上とか下とかなんじゃない?マサルの中で、ホップはテッペンなんだよ。おともだちタワーのテッペン」
    「……バトルタワーみたいに言うね」
    「似たようなもんでしょ」
     ボクは足を引っ込める。抗議するかのように、ユウリの足が伸びてきて、バックパックを蹴って戻った。
    「ホップはね、あたしのライバル」
    「……うん」
    「ライバルはね、タワーのテッペンにいないの。タワーのテッペンを目指す同士なの」
    「うん」
     二年は、長い。ボクの背はぐんぐん伸びて、座っていてもユウリを見下ろす形になる。ユウリは髪を伸ばして後ろでひとつにくくってる。ねえ、ユウリ、その髪型さ、巷じゃキミのエースポケモンになぞらえて、インテレオンの尾っぽって言われてるんだ、知ってた?
    「それにホップのタワーのテッペンにはね、ずっと居るから」
    「だれが?」
    「やだ。知らないはず、ないじゃん。あたしたち、ずっと聞いてきたでしょ、ホップのだあいすきなあの人のこと」
    「……それってあの人のこと言ってる?」
    「そうだよ」
    「違うんじゃない、それって……なんだろ、タワーの種類が。ボクはユウリが大事だけど、それこそ上も下も……タワーもないよ。家族なんだから」
    「何言ってんの」
     カシャン……再び鳴ったカメラアプリの音。店員さんが「すみません……」と女の子たちに注意をする声。周りの人たちの意識が見知らぬオトコのコとお茶をしにきているチャンピオンから女の子たちに移る。ユウリは笑ってた。知ってるよ、分かってるよとでも言うように。教えてあげるとでも言うように。
    「あたしとマサルはセックスしないでしょ」
     ボクのつま先を、ユウリは踏んだ。
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    ナンデ

    DOODLEアレルノ 通常END後
    貴方の為に生まれた、これは運命 生まれは変えられない。ルノーは自分の生まれた家柄にも、立場にも何の不満も有りはしなかったが、それでも自分の生まれからくる宿命と憧れからくる仄かな夢とを天秤にかけて、夢を諦めたことがある。
    「ルノー、ありがとう。俺を信じてくれて……」
     戴冠式が終わって、夜。熱気の冷めない城下町と違って、グランコリヌの城にあるアレインの部屋にはしんとした夜の空気が満ち満ちていた。ルノーはベッドに腰掛けるアレインの頂きに窓から差し込む月明かりが反射して、天然の王冠のような煌めく輪があるのを、立ち尽くしたまま、見ていた。
    「アレイン陛下……」
     アレインの部屋、とは、呼ばれの通り、彼の自室であった。急遽運び込まれたキングサイズの天蓋付きのベッド以外は、アレインがこの城から去った日のまま、子どもサイズの椅子や、勉強机などが放置されていた。埃は、積もってなかったのだと言う。何も減ったり、増えたりしても居なかったらしい。それはガレリウスの中にいたイレニアが、存在を奪われて尚、最愛の息子の帰る場所を護り続けたのか、それともガレリウスがグランコリヌ城自体にはなんの執着もなく、維持を侍女たちに任せきりにしていたのか。今となっては、もう知る術もない。ガレリウスはアレインが討ち倒し、その過程でイレニアは魂だけではなく、姿形をもこの世から失くした。
    1878

    ナンデ

    DOODLE手放したことなんてなかったよ

    前世記憶有り・現代世界転生・年齢逆転のアレルノ
    呟いたものをふわっと小説にしたふわっとした小話なのでふわっと読んでください。ふわふわ。
    千年隣に居させて欲しい、貴方の蒼と魂の ルノーの未練は永くアレインを独りにしたことだった。未練は後悔と混ざりあって執念に変わる。生きていた頃と同じように、ルノーの魂は熱く燃えて、魔法ではなく科学が蔓延り、馬ではなく低燃費軽自動車が走り回る世界に生まれる時に「今度こそ、あの方を置いていきたくない」と大層踏ん張った。その結果が、これだ。
    「ルノー……久しぶり」
    「陛下……」
    「はは、良かった。覚えていてくれたんだな。……もう陛下じゃないし、殿下でもないけど」
     いたずらっ子のように微笑む、かつての恋人は見るからに上等のスーツを着ていた。薄青のシャツに、あの紋章を思わせる濃い青のネクタイをしめている。目元には少し皺が寄っていた。慣れた着こなしと落ち着いた表情は、大人の男そのものだった。問題は、ルノーが着ているのが学生服だと言うことだ。県内でも有数の進学校の創立当初から変わらないレトロな学ランに、夏休み明けに新調したスニーカー。抱えているのは教科書が詰まったナイロンリュックで、これは高校入学の祝いに祖父母に買って貰ってから一年半と少し、大事に使っているものだった。
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