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    ナンデ

    @nanigawa43

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    何でも許せる人向け 雑食壁打ち

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    ナンデ

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    ※dcst最終巻までのネタバレとメカ千kuの中身が彼だったらという捏造、名前有捏造キャラ有

    遠い遠い未来で、明日も カツン、カツンと歩く音。歩幅は一定で狂うことはない。僕は一生懸命彼が翻す、白衣の裾を追いかける。
    「博士、待って」
    「あぁ?……だからもう家に帰れって。母親が心配すんだろ」
    「いや!まだまだ聞きたいことあるんだもん。教えて、教えてよ、ねえ石神博士ったら」
     どうせ家に帰ったって、仕事で両親はいないのだ。冷えたリビングと冷蔵庫の中の作り置きのごはんが待ってるだけ。
    「ねえ、石神博士。それで?それで千空はどうしたの。宝島で一人きりになって、イバラと対峙する……一番気になるところで終わらないでよ!」
     石神博士はくるんと振り向いて、僕に顔を近づける。錆びにくいニッケルを使った銀色の皮膚。教科書と昔のお金に残る偉人に似せて作られた顔立ちは、でも僕にしてみればこっちが本物だ。
    「続きはまた明日な」
    「もう!そんなんじゃ全部聞く前に僕おじいさんになっちゃうよ」
     僕は頬を膨らませて、分かりやすく怒って見せる。石神博士は目を細めて(というよりも、目を細める動きををわざわざ僕のためにしてくれて)頭を撫でる。冷たくて固い感触が、僕の真っ黒な髪の上を滑る。
    「お爺さんになるまで、ちゃんと私の所に通っておいで、愛しい子」
     聞き慣れた「石神千空」の合成音声じゃなくって、ピポパボ音の混ざった、いかにもな合成アナウンスで彼は言う。僕は「あ、泣かせちゃった」と思う。博士は機械なのに、宇宙人なのに、僕よりうんと年上で頭も良いのに、結構涙脆い。繊細なヒトなのだ。
    「……明日ぜったい話してね」
    「もちろん!」
     これは明るくて力強い、男の人の声。
    「約束だよ」
    「君こそちゃんと忘れないようにするんですよ」
     今度は先生みたいな言い方の大人の男の人の声。
    「しないよ」
    「うん。いい心がけだね。寝る前に歯磨きもするんだよ」
     落ち着いた男性の声。僕はこの声のこと、お兄ちゃんの声って呼んでる。
    「……ね、石神博士」
    「なんだよ?」
     ようやくいつもの石神博士の声に戻った彼が、僕を研究所の入り口まで送るために手を繋いでくれる。
    「今度のダイヤはさ、僕にちょーだい」
    「今度って……使い終わったやつだろ。割れてるから売っても二束三文なのにか?」
    「売らないもん。大事にする。千空もゲンも、ゼノも司も、みんな貰ったんでしょ」
    「押し付けたっつーんだよ、ああいうのは」
    「僕だけ貰ってないのずるいでしょ」
     博士の歩幅に合わせて歩くと僕の小さな身体ではどうしても早歩き気味になるから、研究所の入り口が近付く頃には僕の息はすっかり上がってる。ほっぺをカンカンに熱くさせて、僕の体温で温もった博士の手をそっと離す。
    「……なぜ?」
    「ずるいでしょ?僕だって博士の友だちなんだからさあ!」
     博士の顔は止まってる。笑っても怒ってもない。ロボット然とした、真顔のまんま。でもね、僕は友だちだからなんとなく分かる。照れてるんでしょ。
    「約束だよ、博士!ダイヤモンドも、明日のお話もだよ!」
     ぶんぶん手を振って、博士と別れて僕は夕暮れの中を小走りで帰る。後ろから博士が「気をつけて帰れよ」と叫んでるのが聞こえる。
    「おい、ビャクヤ!転ぶんじゃねえぞ!」
     博士が僕を呼んでる。嬉しくて、振り向いて大丈夫だよって言おうとして転んじゃったのは、恥ずかしいから内緒だ。
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