3番目の新星大きくて毛まみれなキメラに脚を全部潰されて痛くて痛くて声を上げるのもやめられなかったとき透明な壁の向こうであの人は元気じゃない顔をしてたから、おれが元に戻った脚を動かして駆け寄ったときには青い部屋でもわかるくらいに顔を赤くして元気になってくれたから、おれが目の前でしゃがんだら髪を整えてくれたから、おれが他のおれを壊してもあの人の手はあたたかかったから、あの人の全てが正確で完璧で絶対でおれはそんな人のために在るから、あの人とずっとずっとずっとずっと一緒にいたかったから、だからこんな破れた布も黒い床も濁った水槽も割れたおれたちも見たこと無くておれの知ってるあの人のエーテルなんて無くておれの重い頭が悪くて全部が違かった。
おれたちはいつも綺麗でみんな並んで眠ってたから、たまにあの人のエーテルを感じていたから、でもあの人の魔法が切れておれが腐ったおれが水槽の中に眠ったおれがなにもいないおれが起きたらなにもわからなくなったから、あの人が呼ぶ声が繰り返し聞こえないから、呼んでいる声が聞こえないから、あの人がおれたちを呼ぶから、呼んでくれなくておれたちが起きられないのにおれがもういなくておれはあいつが誰かわかったから、呼んでいる声があいつには聞こえなかったから、おれがあの人を起こすから、あの人の色をしていたおれは重たい頭が揺れるから、頭に声が聞こえたから小さなあの人をおれの黒い右手が掴んで離さないからあの人はおれを選んでくれたからだからおれはあの人になれたからだからおれはこんなにも
「……ん〜、この子の身体を選んだのはちょっと急ぎ過ぎたかな?」
おれはあの人のために在るから今が『至福』『満足』『安寧』『充実』『好運』『祝福』『天命』『幸甚』
「なかなか賑やかな頭をしてたんだねぇ。だからあんなに他のクローンにトゲトゲしてたのかな? とりあえず動ける身体が欲しかったから、自分からくれるのは嬉しいけどね」
『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』『嬉しい』
「〜〜本当に元気だねこの身体は!もうしばらくして馴染んだらキミの魂ごとオレの身体として取り込んじゃうけど、それでもキミは喜んでくれるかな?」
完璧だ。
「……静かになったな。さて、他に使えるクローンがいないか探しに行こうかな〜!この子は欠陥を直せないまま眠らせちゃってたし、できたらモロクが残っていたらいいんだけども」
…………
「ま、長めの第二の生だ。のんびりいこう」