うだるような蒸し暑さに、強烈な日差しが差し込んだ。海水で出来た向こうの広場で、蜃気楼が誘うように揺らいでいた。僕は近くのコンビニで買った弁当を片手に、近場のベンチに座り込んだ。磯風が清涼感とともに、潮の匂いを運んでくる。
新築マンションの内装写真を撮るよう上司から命令を受けた僕は汗だくだった。何しろ当のマンションにはまだ電気が通っておらず、エアコンが点けられなかったのだ。おまけにエレベーターは工事中で業者が入り浸り、僕は出来立ての白いコンクリ階段を上っては、一部屋ずつ写真を撮る羽目になった。幸い単身者向けの小ぢんまりしたマンションだったからよかったものの、これがファミリー向けならいつ脱水症状で倒れてもおかしくなかっただろう。
海浜公園の近くだったのもまた幸いなことだった。職場に帰るにはちょっと遠い。僕は上司に相談して、公園で昼食を取ることにしたのだった。