片隅の現 鎧を順番に外し、ティルザに貰った服に着替える。かつては戦闘時にも着ていた服だが、鎧を身につけるようになった今では夜着と軽装を兼ねていた。
ペレギオンの宿からはヴォルラーンの居城が見える。あのどこかに囚われたシオンを助けるためにも、今日は休んで体力を回復させなければならない。ティスビムを発って以降野営続きで、宿で寝るのは久しぶりだった。痛覚が戻ってからというもの、感じる疲労も段違いで心身ともに疲れ切っている。早く寝てしまおう、と寝台に横になった。
特に意識することもない、当たり前の動作だった。仰向けになり手足の力を抜く。
その瞬間、全身が総毛だった。
「……ッ!?」
反射的に寝台から飛び降りる。床を這うように転がり、背を壁に預けた。心臓が異様に早く脈打っている。大した運動もしれいないのに息が上がって呼吸が苦しい。
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