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    みるく

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    みるく

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    8/20に頒布予定の司類派生パロ(騎士×魔術師パロ)の書き下ろし部分のサンプルです。
    Twitterと支部に載せていたお話2本の再録と書き下ろし3本を一冊本にまとめる予定です。
    支部に載せているお話2本をまとめているシリーズはこちらから
    https://www.pixiv.net/novel/series/10085128

    8/20に頒布する🌟🎈騎士×魔術師パロの書き下ろし部分のサンプル(未完成)【秘密裏に行われる真夜中の攻防戦】

     とある部屋の中で一人、筋トレや剣の素振りなどの鍛錬をしていた青年の荒い息遣いが響き渡る。
    「……ふぅ、今日の自主練はこれくらいにしておくか」
     その青年、司は鍛錬を止め、風呂場で汗ばんだ体を洗い流し、寝間着に着替えると疲れた体をベッドへと沈めこむ。全体で行う訓練を終えた後もこうやって自室で鍛錬を欠かさず行い、日々腕を磨き続ける。これが若くして騎士団長を立派に務める司の日課だった。上に立ったからといって、己が成長するための努力を決して怠らない男であった。
     今日も日課を終え、疲れた体をしっかり休めるためにも早く就寝に入ろうと目を瞑ってからほんの数分後の事だった。眠りが深くなりそうなタイミングで扉の外から何やら物音らしきものが耳に聞こえてきた。何事かと思い、ベッドに入ったままではあるが耳を澄ませる。司の私室は騎士団長ということもあり、有事の際、すぐに動けるようにと王宮内に存在していた。そうした部屋事情や、感じ取った気配からも下手な輩ではなさそうだと判断した司はそのまま様子を窺った。するとキィ、と音を立てて扉が開いていくではないか。許可なく扉が開かれたことで流石に警戒心を高めた司は侵入者を油断させるために狸寝入りを決め込むことにし、再び様子を窺っているとおずおずといった感じで誰かが部屋に入り込む気配を感じた。思っていた反応と違い、相手に気づかれないように目を薄く開いて確認すると入ってきた人物はなんと類であった。例の襲撃事件を含む幾度の試練を乗り越え、類の信頼を勝ち取り、森から王宮へと連れ出して以来、類の希望もあって類の私室は司の隣へと用意された。つい先程も互いに自分の部屋の前で就寝前の挨拶をして別れたばかりだった。だからもうすでに眠っているものだと思っていた予想外の人物に司が固まっていると類は足音を立てないようにそっと歩き出して、司が眠っているベッドのそばまで近づいてきた。
    (こんな夜更けにどうしたのだろうか)
     ここで起きてみても良かったのだが、珍しい類の行動にもう少し様子を見てみたくなった司は静かに目を瞑り直し、再び眠っているフリをする。
    「……司くん、寝てる、よね?」
     そばまで来た類が小声で確認するように話す言葉に司は返事をせず、狸寝入りを決め込む。返事がないのを眠っていると受け取ったのか類がホッと息を吐いたのが聞こえた。さて、ここからどうするつもりだ? と司が類の次の行動を待っていると類は恐る恐るといった様子で司に手を伸ばし、司の手をキュッ、と小さく握った。
    (⁉)
     にぎにぎと触り心地を確かめるように司の手を握る類に司は内心悶ながらも決して起きていることがバレないように必死になって取り繕っていた。そうしていると類は司の手を自身の頬に当て擦り寄っていた。
    「司くんの手、あったかいなぁ。……うん、これで寂しくないや。寂しいなんて二度と感じることないって思っていたけど、やっぱり司くんの温もりは安心するなぁ。こうやって誰かに触れたりすることができるのってまだ司くんしか駄目だし、それに……ふふっ、やっぱり直接頼むのは恥ずかしいしね」
    「っ……」
     類がわざわざ夜更けに訪ねてきたのは長らく感じていなかったらしい寂しさからきたものだと理解し、さらに正面からお願いするのは類の中ではまだ恥ずかしいことのようで、こうして夜な夜な、唯一触れ合うことができる司が寝た隙を狙って寂しさを紛らわしに来たようだ。その愛くるしい行動に、鍛錬で身体だけではなく頭も疲れているせいもあるのか司の理性は限界を迎え、はち切れそうだった。
     そうして必死に本能を押さえつけていると、司の手を握っていた類は満足したのか手を離し、司の前に立った。何をするのかと思いきやいそいそと、もぞもぞと司の懐に潜り込み抱きつくのだった。
    「ふふっ、司くんと一緒だぁ」
     本当に嬉しそうな声でそう言う類に司は変な叫び声が出そうになるのを必死で堪えた。
    (耐えろ、耐えろオレの理性‼ 耐えるんだぁぁ‼)



    【初めて抱く感情の正体は】

    「司くんの馬鹿!もう知らない!」
    「待て類!本当に何の話だ!?」

     騎士団員達が団長である司の元へ向かうために王宮内を歩いているととある一室にて二人の激しい、という言葉が正しいのか定かではないがとにかく言い争いが聞こえてきた。その二人の声は聞き覚えがありすぎるくらい馴染みのある声だったため、騎士団員達は一体何事かと思い、その部屋の外に集まり、ちょうど扉が半開きだったので外からそっと中の様子を伺う。

    (中略)
     
     目に涙を浮かべてその場から逃げ出した類を見て司の部下達は「とうとう類さんを泣かせた…」「あんなに泣かすなんて、まさか浮気…!?」「オレ、団長のこと一応信じてたのにな……」などと憶測を口々に述べ、憐れむような目で司を見つめていた。その視線を受け司は咄嗟に叫ぶ。

    「待て、お前達!やめろ!そんな憐れむような目でオレを見るな!全くの誤解だーーーっ!!」

     そう叫ぶ司の大声が城中に響き渡ったのだった。


     では一体何が起こっているのか。事の発端は数時間前に遡るーーー。


             ◇ ◇ ◇


     類もこの頃にはまだ限られた人物ではあるが、彰人や瑞希とはもちろん、司の妹の友人で司の部下である志歩ともそれなりに仲良くなり(ちなみに妹の姿を類はまだ見たことはない)、司の幼少期からの知り合いかつ、彰人の親友で王宮図書館の司書である冬弥と本の内容について話し込めるほどに、ある程度心を許せるまで仲良くなっていた。
     今日は冬弥から勧められた本とその他に気になっていた数冊を借りて、その本達を司と一緒に読みたいと思った類が司の私室に寄ろうと歩いているとふと、司の声が聞こえ、自然と司を求めてそちらの方に足を向けていた。そして角を曲がった先に司の背中が見え声をかけようとしたところで別の声が聞こえ、まだ人慣れしていない類は思わず角に隠れてしまった。誰と話しているんだろうとそっと角から覗いてみるとそこに居たのは先程見かけた司とツインテールの可愛らしい女の子だった。女の子が何かを話すと司も楽しそうに相槌を打ち、とても、楽しそうだった。

    「………?」

     何故か胸がチクリと痛むのに類は首を傾げた。この痛みが何なのか分からなかったが、今はそれよりも二人の会話の方が気になって仕方ない。盗み聞きなんて悪い気がするがそれでも話の内容が気になってしまい、そっと影から聞き耳を立てる。
     少し離れているせいか、話の内容ははっきりとは聞こえない。断片的にしか聞こえないが会話はとても弾んでいるようだ。

    「ーーこれ、ーーさんにわたしーーー」
    「ーーーれは?」
    「ーーさんにあげようってーーーそれでねーーちゃんがーーー」
    「ーーれは素晴らしいな!ーーにも後で礼をーーーー」

     二人とも楽しそうに話している。そして不意に女の子がとびっきりの笑顔になって。

    「やったー!ーーがとう!えへへ、ーーー大好き!」
    「ああ、オレもーーー愛してるぞ!」
    「ーーーー」

     気がつけばその場から逃げるように走り出していた。




    【迷子の龍と僕らの冒険譚(仮)】

    「うーむ、類は一体どこまで行ってしまったんだ?」
     とある日の昼下がり、木漏れ日が降り注ぐ森の中で困ったような声で呟く騎士、司はきょろきょろと辺りを見渡す。呟いた内容からも司は類を探しているようだ。
    「全く、好奇心旺盛なのは構わんが、探す身にもなってくれ」
     疲れたようにため息を吐きながら森の中を歩き回る司。それもそのはずだった。なにせ、朝からずっと類を探して森を歩き回っているのだから。朝食をともにとろうと類の部屋に訪れたところ、扉をノックしても返事がなく、中に入ると机の上に書き置きだけが残してあり、その内容が『気になることがあるから森に行ってくるね』といったものだった。森は元々、類が過ごしていた場所であり、馴染みある場所でもあるので過剰に心配することはないだろうが、公私共に類のそばにいると誓っている上に、守るべき相手の行き先を把握できないことは騎士としては不安になるものだ。
    「類ー、いないのかー?」
     名を呼びながら散策を続ける。このだだっ広い森の中、声が相手に届く可能性は極めて低いだろうが何かしらのきっかけになればと呼び続ける。
    「おーい、るーいー」
    「ギュー?」
    「……ん?」
     類を呼んでいたはずの声に応えたのは完全に人ではない声だった。思わず司は動きを止め、声がした方へと振り向く。振り向けばそこには。
    「キャウ」
    「……は⁉」
     見たことのない動物がこちらに向かって鳴いていた。頭部には小さな角が生えており、長い尻尾に鱗に覆われた体、そして背にはまだ未発達なのか小さな翼が生えていて、明らかに一般的に見かける動物達とは違う、見慣れない姿をした動物に司は警戒しながらも好奇心に負けて近づいてみる。
    「な、なんなんだコイツは……動物……だよな?」
     まだ類がこの森に居住を構えていた頃、類に会うために何度かこの森を訪れた時にこの森に住まう動物達を幾度か見かけたことはあったが、この動物は一度も目にしたことがなかった。そろりそろりと警戒しながら司は近づいてみたが、近づかれても大した警戒をすることなく不思議そうにこちらを見つめてくる動物に司も自然に警戒心が解けていった。そして改めて動物を観察してみるが、やはり見たことのない姿に首を傾げる。
    「ここら辺では見たことない奴だな……お前、どこから来た?」
     尋ねるが当然答えが返ってくるわけもなく、動物はきょろきょろと辺りを見渡し始めた。その仕草と体の小ささから子供かもしれないと判断した司は周りに親らしき動物がいないことから、とある考察に辿り着く。
    「もしや迷子か? それはいかんな。親はどこに……」
     迷子なら早く親に会わせてやらねば、と同じようにきょろきょろと辺りを見渡し、一緒に動物の親を探しているとその様子を見上げていた動物の鼻にどこからともなく現れた蝶が止まった。するとそれがくすぐったいのか、動物の鼻がムズムズとしだし、次に。
    「くちゅん」
     と、蝶が飛び立ったのと同時に可愛らしいくしゃみを繰り出す。くしゃみだけならなんの問題もない。なかったはずなのだが、問題はその後だった。そのくしゃみと共に動物の口から炎を吐き出されたのだ。そしてその炎は司の目の前を通り、前髪をほんの少しだけ焦がした。
    「……どわぁぁぁ⁉」
     突然、目の前の動物から炎を吐き出され挙げ句、自身の前髪を少しとはいえ焦がされた司はあまりに非現実的な事に思考が止まってしまったことで一歩遅れて驚愕し、動物から全力で距離を取った。
    「な、なななななんなんだお前⁉ 炎を吐いたぞ⁉ は⁉ 炎⁉」
    「あれ? 司くん?」
     炎で前髪を焦がされたことに動揺し、震える指で混乱しながら動物を指して対峙していると後ろから聞き慣れた声が聞こえてきた。その声から想像した人物に慌てて声が聞こえた方へ振り向くと想像通り、類がそこに立っていた。
    「類⁉ お前、今までどこに……じゃない! だ、駄目だ類! 近寄るな‼ コイツは炎を吐くから危険だ‼ だから……」
    「おや、これは珍しい。魔法生物じゃないか」
     司の慌てる声を遮った類は動物を見るや否や、好奇心にあふれた表情でその動物を見ていた。その一方で司は先程類が言っていた聞き慣れない単語に戸惑うように首を傾げていた。
    「ま、魔法生物……?」
    「ああ、僕ら魔術師と同じく体内に魔力生成器官を持っている動物だよ。その警戒心の高さから滅多に人前には現れないんだけど、きっと、外の世界のことがまだよく分からないんだと思うよ。だからこうして無警戒に近づいてくるのさ」
     魔法生物について司に軽くではあるが説明すると、類はその魔法生物の方へと向き直った。そして怖がらせないようにと優しい声色で話しかける。
    「大丈夫だよ、おいで」
    「キュー?」
     類が笑顔で怖くないよ、と言いながら両手を広げるようにして魔法生物の行動を待つ。それを見た魔法生物は首を傾げながらそろそろと類に近づき、鼻を類の手に近づけて匂いを嗅いだ。やがて安全と判断したのか類の手に頭をグリグリと押し付けた後、類を見上げ、その胸に飛び込んだ。勢いよく飛び込んできた魔法生物を少しよろけながらも受け止めた類はそのまま魔法生物を抱きかかえて笑いかけた。
    「よしよし、いい子だね。……ふふっ、可愛い」
     類は魔法生物に向けてそう言ったが、司にとっては魔法生物を抱きかかえて楽しそうに笑う類の方が可愛らしく、また魔法生物も類に懐いてすり寄っていた。その姿はまさしく。
    「女神……」
    「ん? 司くん、何か言ったかな?」
    「何でもない。気にするな」
    「そ、そうかい……?」
     司の呟いた言葉を上手く聞き取れず、聞き返したが何もないとはっきりとした声で言われた類はその圧に押され、曖昧に返事を返すのだった。

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    支部に載せているお話2本をまとめているシリーズはこちらから
    →https://www.pixiv.net/novel/series/10085128
    8/20に頒布する🌟🎈騎士×魔術師パロの書き下ろし部分のサンプル(未完成)【秘密裏に行われる真夜中の攻防戦】

     とある部屋の中で一人、筋トレや剣の素振りなどの鍛錬をしていた青年の荒い息遣いが響き渡る。
    「……ふぅ、今日の自主練はこれくらいにしておくか」
     その青年、司は鍛錬を止め、風呂場で汗ばんだ体を洗い流し、寝間着に着替えると疲れた体をベッドへと沈めこむ。全体で行う訓練を終えた後もこうやって自室で鍛錬を欠かさず行い、日々腕を磨き続ける。これが若くして騎士団長を立派に務める司の日課だった。上に立ったからといって、己が成長するための努力を決して怠らない男であった。
     今日も日課を終え、疲れた体をしっかり休めるためにも早く就寝に入ろうと目を瞑ってからほんの数分後の事だった。眠りが深くなりそうなタイミングで扉の外から何やら物音らしきものが耳に聞こえてきた。何事かと思い、ベッドに入ったままではあるが耳を澄ませる。司の私室は騎士団長ということもあり、有事の際、すぐに動けるようにと王宮内に存在していた。そうした部屋事情や、感じ取った気配からも下手な輩ではなさそうだと判断した司はそのまま様子を窺った。するとキィ、と音を立てて扉が開いていくではないか。許可なく扉が開かれたことで流石に警戒心を高めた司は侵入者を油断させるために狸寝入りを決め込むことにし、再び様子を窺っているとおずおずといった感じで誰かが部屋に入り込む気配を感じた。思っていた反応と違い、相手に気づかれないように目を薄く開いて確認すると入ってきた人物はなんと類であった。例の襲撃事件を含む幾度の試練を乗り越え、類の信頼を勝ち取り、森から王宮へと連れ出して以来、類の希望もあって類の私室は司の隣へと用意された。つい先程も互いに自分の部屋の前で就寝前の挨拶をして別れたばかりだった。だからもうすでに眠っているものだと思っていた予想外の人物に司が固まっていると類は足音を立てないようにそっと歩き出して、司が眠っているベッドのそばまで近づいてきた。
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