時間の問題「小隊長がエリートオペレーターへの推薦を辞退なさったというのは本当ですか?」
まさかこの自分がもう一度部隊を率いるなど思ってもみなかったが、気がつけばその肩書で呼ばれることにも違和感をおぼえなくなってずいぶんと久しい。その中でも一番最近配属された黒毛のヴァルポがおそるおそるといった様子で尋ねてきた内容に、周囲の隊員たちは、あ、と口を開いた。
「あのドクターの護衛も単独で務められてるんですよね、それってエリートオペレーターの方々でもそうそうないことだと思ってるんですが」
やや興奮気味に言い募る新人の奥で、部下連中が誰が止めに来るのかのじゃんけんを始めた。お前たち悠長にそんなことをする余裕があったらさっさと全員で来い。と念じたところで貧乏くじを引きたくない連中はどこ吹く風である。俺の部下だけあって肝が据わっている。あとで訓練内容を追加してやろうと固く決意しつつ、エンカクは目の前の若い彼に対して今まで何度も繰り返してきた言葉をうんざりと吐き出した。
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