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    花布さんの素敵最高イラストを見てくれ

    #炎博♂

     ドクターと呼ばれる男は、自分の手で花を摘んだ記憶が一度もない。戦場で、指先ひとつ呼吸ひとつで人の命を奪う人間が花一輪、と馬鹿にされるだろうが、何故ならばドクターが手にする花はすべて目の前の男が選び摘み取ったものだからである。

     押し付けられた花束を無造作にかき抱きつつ、その大きな手のひらの持ち主を見上げる。彼は何も言わない。いつだって何も言わない。花の名前も、産地も、花言葉の各地域における意味の違いさえドクターは知っている。だが男がそれらを手渡して来る意味を、ドクターはいまだつかみかねている。長く抱えているから、指先には草の香りがしみついてしまっているだろう。それはおそらく彼の剣を握るための傷だらけの指も同様のはずで、血の匂いの消えぬところまで同じだ、とふと笑みがこぼれてしまった。
     その笑みの溶けた吐息をどう思ったのか、彼はといえば花束をこちらの腕に押し込んだのと同じ手のひらで、ゆっくりとドクターの体を押し倒した。当然、散る寸前であった花びらがひらりと部屋の中を舞う。あわてておさえた花ごと、その太い腕はドクターの体を抱え込む。自分の貧相な体が彼の体のかたちとぴったり合わさるのだと知ったのはどれくらい前のことだっただろう。

     彼は何も言わなかった。いつだって何も言わなかった。無言のまま瞼を閉じ、ドクターの髪へと顔をうずめた。だからドクターは今日もまた、彼の選んだ花とともに彼の腕の中で眠りにつくのだった。

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    DOODLE岳博ギャグ、自分のもちもちロングぬいぐるみに嫉妬する重岳さんの話。博さんずっと寝てます。絶対もちもちロングおにい抱き枕寝心地最高なんだよな…
    180センチのライバル 重岳は破顔した。必ず、この眼前の愛おしいつがいを抱きしめてやらねばならぬと決意した。重岳は人という生き物が好きだ。重岳は武人である。拳を鍛え、千年もの年月を人の中で過ごしてきた。けれども、おのれのつがいが重岳を模したもちもちロングぬいぐるみを抱きかかえて、すやすやと寝台の上で丸くなっていることについては人一倍に敏感であった。


    「失礼、ドクターはどちらに」
    「ドクターでしたら、仮眠をとると私室へ」
     あと一時間くらいでお戻りになると思いますが、と教えてくれた事務オペレーターに礼を伝え、重岳はくるりと踵を返した。向かう先はもちろん、先ほど教えてもらった通り、ドクターの私室である。
     この一か月ばかり、重岳とドクターはすれ違いの生活が続いていた。ドクターが出張から戻ってきたかと思えば重岳が艦外訓練へと発ち、短い訓練ののちに帰艦すれば今度はドクターが緊急の呼び出しですでに艦を離れた後という始末で、顔を見ることはおろか声を聞くことすら難しかったここ最近の状況に、流石の重岳であっても堪えるものがあったのだ。いや流石のなどと見栄を張ったところで虚しいだけだろう、なにせ二人は恋仲になってまだ幾ばくも無い、出来立てほやほやのカップルであったので。
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    DOODLE岳博、いちゃいちゃギャグ。寒い日に一緒に寝る姿勢の話。岳さんが拗ねてるのは半分本気で半分はやりとりを楽しんでいる。恋に浮かれている長命種かわいいね!うちの博さんは岳さんの例の顔に弱い。
    「貴公もまた……」
     などと重岳に例の表情で言われて動揺しない人間はまずいないだろう。たとえそれが、冬になって寒くなってきたから寝ているときに尻尾を抱きしめてくれないと拗ねているだけであったとしても。


     彼と私が寝台をともにし始めてから季節が三つほど巡った。彼と初めて枕を交わしたのはまだ春の雷光が尾を引く暗い夜のことで、翌朝いつものように鍛錬に向かおうとする背中に赤い跡を見つけ慌てたことをまだおぼえている。それからほどなくして私の部屋には彼のための夜着がまず置かれ、タオルに歯ブラシにひとつまたひとつと互いの部屋に私物が増えていき、そして重ねる肌にじっとりと汗がにじむような暑さをおぼえる頃には、私たちはすっかりとひとかたまりになって眠るようになったのだった。彼の鱗に覆われた尾にまだ情欲の残る肌を押し当てるとひんやりと優しく熱を奪ってくれて、それがたいそう心地よかったものだからついついあの大きな尾を抱き寄せて眠る癖がついてしまった。ロドスの居住区画は空調完備ではあるが、荒野の暑さ寒さというのは容易にこの陸上艦の鋼鉄の壁を貫通してくる。ようやく一の月が眠そうに頭をもたげ、月見に程よい高さにのぼるようになってきた頃、私は名残惜しくもあのすばらしいひんやりと涼しげな尾を手放して使い古した毛布を手繰り寄せることにしたのだった。だが。
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    DOODLE転生現パロ記憶あり。博が黒猫で花屋の炎さんに飼われている。博猫さんは毛づくろいが下手すぎてもしゃもしゃにされたのを自力で戻せないので、原因にブラッシングを要求しました
    ねことのせいかつ いくら朝から店を閉めているとはいえ、生花という生き物相手の職業であるためやらなければならない作業は多い。ましてや今回の臨時休業の理由は台風、取引先各所への連絡から店舗周辺の点検と補強までひと通り終わらせたときには、すでに窓の外にはどんよりとした黒い雲が広がり始めていた。


    「ドクター?」
     店の奥にある居住スペースの扉を開けても、いつものようにのたのたと走り来る小さな姿はない。しん、とした家の気配に嫌な予感を募らせたエンカクがやや乱暴な足取りでリビングへと駆け込んだとして、一体誰が笑うというのだろう。なにせあのちっぽけな黒猫はその運動神経の悪さに反して脱走だけは得手ときている。植物や薬剤をかじらないだけの聡明さはあるというのに、頑として水仕事で荒れた手のひらで撫でられねば一歩も動かないと主張する小さな生き物に、どれだけエンカクが手を焼いたことか。だがエンカクの心配をよそに、雨戸を閉めた仄暗い部屋の中で黒猫はあっさりと見つかった。キッチンの出窓、はめ殺しの小さな窓には雨戸もカーテンもないため、今にも落ちてきそうなほどの暗雲がよく見て取れた。自身が抱いているものを安堵とは決して認めないものの、やや歩調を緩めたエンカクは窓の外をじっと見つめたまま動かない黒猫の背にそっと立つ。
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    DOODLEおじ炎博、あんまり美味しくなかったのど飴の話。おじ炎さんが考えすぎている。庭園メンバーいつまでも仲良しだととても嬉しい。
    おじ炎さん一人称にした結果、おじ炎さんの認識がだいぶずれてるのでスズちゃんたちがめちゃ小さかったことになってたり鉱石病があんまり脅威じゃなかったりしてるのに博さんの体調にはすこぶる敏感で、自分で書いてて愛じゃん…て勝手にニコニコしていた。
    「だから置いていっていいよって言ったのに」
     何のことを言われているのかと尋ねられたところで、俺に返せるのは無言だけである。だが目の前の人間はといえばその無言からですら情報を引き出しあっさりと真相へとたどり着いてしまうほどの脳みその持ち主であるため、つまるところこれはただの意味のない抵抗でしかないのだった。

     鉱石病というのはそれなりに厄介な病気で、時間をかけて徐々に内臓の機能を奪っていく。そのスピードや広がりやすい箇所には個人差が大きいとされているが、やはり感染した元凶である部分、俺に取っては左肩から喉元にかけての不調が最近とみに目立つようになってきた。そもそもこんな年齢まで生きるつもりもなかったのだと言えば、目の前の妙なところで繊細な男はわかりやすく気落ちして、挙句の果てに食事量まで減らして回りまわって俺が怒られる羽目になるため口にするつもりはない。たかがサルカズ傭兵というそこらじゅうで使い捨てにされる命ひとつにまで心を割く余裕など持ち合わせてもいないくせに、固く握り込まれるその小さな拳をそこまで悪いものとは思わなくなったのは、まさしく病状の悪化のせいに違いない。決してこの男に感化されたわけではない。決して。
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    DOODLE博が三徹後に炎に夜のお誘いしに行ったら完全にコミュニケーション失敗したけど主目的は果たせた話。狐狸に煙草を吹きつければ真実の姿を現す風習はテラにもあるんだろうか
    煙草は恋の仲立ち[炎博♂]「君の吸ってるその煙草のメーカー、倒産したらしい」
     黒々としたバイザーのその奥は相変わらず何を考えているのかわからないぽかりとした空洞で、だがその口から唐突に一般的な世間話のような言葉が飛び出してきたものだから、エンカクはついうっかりと相手に続きの言葉を発する隙を与えてしまったのだった。
    「もともと狭い範囲にしか流通していなくて、値段の安価さから固定客はそれなりにいるものの原材料の供給が不安定だった。そこに親会社の経営悪化が響いて、先月正式に撤退が発表されてたよ」
    「あそこにはこれしかなかった。特に意味はない」
     黄ばんだ白い箱に角の生えた頭蓋骨。カズデルに流通する物資は他の地域では見かけないものが多かったらしく、製薬会社の一員として各地を回りながら見慣れた品々が見当たらぬことに当初は戸惑いをおぼえることも多かった。そんな日々の中でも数少ない以前からの嗜好品のひとつがこの煙草であったのだが、彼の言葉を信じるならば嗜好品のひとつだったと過去形で語らねばならないのだろう。とはいえ彼に告げた通り、エンカクは別段煙草の種類にこだわりを持っているわけではなかった。ただ単純に選択という手間を省いていただけで、さらにいえば愛煙家というほどのものでもなかった。まさか彼の目には自分が煙草に執着するような人間であると映っていたとでもいうのだろうか。自分の思いつきにおかしみをおぼえ、つい唇の端を歪めてしまったところ、彼は相変わらず茫洋とした真黒の眼差しをこちらへと向けた。
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