つめたいまち あの子が消えてしまってから、2年がたった。
世界はあの子をとうに失っていたから、なにも、なにひとつ変わらなかった。わたしだけひとり、置いていかれた。あの子がわたしの目に映らなくても回る世界。なんたる孤独。
透けるあの子の姿、揺れる長い髪、大きな黒い目、悪戯っぽく浮かべる笑顔。すべて色鮮やかに思い出せるのに、あの子はもう、わたしだけに微笑みかけてはくれない。子供のような悪戯をしてくれない。鈴の鳴るような声で笑ってくれない。 あの子のすべては少しずつ遠くなって、質量を持たない過去になって、わたしの心は侵食されるように少しずつそれを受け入れる。あの子との思い出はたくさんあるのに、わたしは、それを置いていくように、1日1日を生きてしまっている。わたしは、本当にあの子を弔ってしまった。あの子は死者であり、もうわたしと共にはいられないのだと、2度と同じ歩幅で歩くことはできないのだと、2度と一緒に時を刻むことはできないのだと、分かってしまった。わたしが子供だと見抜いていたあの子に、気遣われて、それに気付かずにこんなに長い間付き合わせてしまった。大人になれないあの子はわたしが大人になるまで待っていてくれた。
801