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    HbZld

    @HbZld

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    PROGRESS若い頃の姐さんは王妃様に実らせる気のない片想いをしていたと思っています。 城の石畳に軽快な蹄鉄の音が響く。蔦に彩られた城壁の間を、常歩で進む馬が二頭。白馬には黄金の髪の貴婦人が娘と共に横乗りし、白馬よりやや大きな馬体の黒馬には燃えるような赤い髪の女が跨っていた。
    「ウルボザは馬に乗るのも上手ね」
    「先生が良かったのさ」
    「ふふ。もうとっくに追い抜かされてしまったわ」
     目的地である桟橋まで辿り着くと、砂漠の女傑は黒馬からひらりと飛び降り、白馬に歩み寄って姫と王妃が下馬するのに順に手を貸した。
    「ウゆボじゃ、また来て。やくそくね!」
    女傑の名の発音は幼い姫にはまだ難しい。舌足らずに呼ばれた砂漠の若き長はくすぐったそうに笑って小さな姫を抱き上げた。
    「ああ。また会おう、御ひい様。約束だ」
    浅黒く精悍な頬が子どものふっくらとした頬に寄せられ、青く染めた唇がちゅっちゅっと音を立てる。頬を寄せ合う砂漠式の挨拶に姫は慣れた様子で応じた。
    「このまま連れて帰っちまいたいねえ」
    姫を桟橋に下ろしながら、女傑はしみじみと呟いた。王妃が片手で口もとを覆ってクスクスと笑う。たったそれだけの仕草がひどく優雅だ。
    「ダメよ。ロームが寂しがるわ」
    女傑は大袈裟にため息をついて見せてか 881