独白 聞こえるか。
ゆるい液体に包まれながら、やさしいあなたの声を聞いた。耳の傍で、ぬくもった水溜りがひたりと跳ね返る。
千冬、聞こえるか。
愛しい人の声がオレの名前を呼んでくれることがこの上なく嬉しくて、オレは瞼で頷いた。
1、私の友達 のう貴方なんか救世主じゃない
控えめなアラームで意識が夢の水面から顔を出す。たゆたいながら浮上すると、まだ辺りは薄暗かった。ペールブルーに向かって欠伸をつきながら、松野千冬は寝癖の残る後頭部を無造作に掻いた。十月の冷気が部屋全体を包み込み、そろそろ半袖だけで睡眠をとるのは心許ない季節になってきていた。自らの腕を擦りながら、洗面台へ向かう背中を追いかけるように声が飛ぶ。
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