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    AKYMkrhr

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    AKYMkrhr

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    助けてさんのイラストに萌えすぎてSSを書いてしまいました。
    ※先天性女体化のばじふゆ♀です※

     次どれにしようかなぁ、とオレの図鑑コレクションの背を追う指先は呑気に迷っているようだった。海の生き物にしますか、それとも鳥類のも読んでみます?と弾んだ声で話しかけられてもオレは生返事しか返すことができない。こういうときは素数を思い出せばいいと読んだことがあるけど、ソスウってなんだよ。下着のラインギリギリのショートパンツからはむちりとした太腿が伸びている。尻の丸みにも、その柔らかそうな白い肌にも、まだオレは触れたことがない。
     千冬の楽し気な問いかけを無視して、オレは手近なバスタオルを手に取った。

    「…?え、寒くないですよ?」

     ぱさり、と腰辺りにバスタオルを掛けられて、思わずきょとんと場地さんを見つめる視線に疑問を乗せる。視線をぱちりと合わせると怒っているような、困っているような皺を眉間にいくつも刻んでいた。どうしたのだろう。

    「いーから。」
    「や、むしろ暑いかもしんねぇす。」
    「…頼むから。」

     オレのために、と懇願するように紡ぎ出された彼の声はびっくりするほどか細くて、思わず笑ってしまった。なんすかもう、とまだ突っ立っている腕を引いて隣に座ってもらい、横着にも膝の上に自分の上半身でよじ登った。氷の上に乗り上げるアザラシのようにだらしなく横たわる自分に、痛い程視線が届く。

    「場地さん?どしたんすか。」
    「オマエ…ムボービすぎ…」
    「無防備?何が?」
    「嫁に行く前にそんな恰好で男の部屋で寝る奴があるかよ。」

     オレじゃなかったらとっくに食われてるぞ、とちょっと脅すような鋭さを利かせてつむじぐい、と一度押される。いや、嫁て。頑固亭主関白オヤジかよ。
     今の自分の服装を思い出した。団地住まいの我が子の自室にエアコンなんて高価なものは設置されていない。同じ間取りの場地さんの部屋も同じく、初夏に起動させたばかりの扇風機だけがこれからの役目を待ち構えている。まだ梅雨の蒸し暑さが残る部屋で、長袖でいろと言うほうが酷だ。フレンチスリーブのTシャツからは丸い肩口がのぞき、下に履いているのは脚の付け根までしかないショートパンツ。全裸を回避した究極の納涼スタイルだ。
     まだ怒っているように目元をくしゃりと寄せ、唇を少し不機嫌そうに突き出している。不貞腐れているようにも見えて、ちょっと可愛い。シッシ、と笑って見せるとその感情の色のままこちらを向いてくれた。

    「…ぁンだよ…」
    「大丈夫っしょ、場地さんは優しいから私に手なんか出しませんよ。」
    「まぁ、手、……出さねぇな。」

     ダチだし。そう素っ気なく言うとぱらり、と図鑑のページを開いていく。捲るのが早いと言ってもその手は止まらなかったけど、少しだけペースは落としてくれた。血管の浮いた武骨で大きな手が誰よりも優しいのを知っていて、自分の「ダチ」であることを明言されるたびにほんの少し気持ちが陰る。どうしてだろう、場地さんにダチって思ってもらえているのは嬉しいはずなのに。異性のダチなんかつくらなさそうで、自分が特別枠だって言われているようなものなのに。「ダチ」なんだと納得しようとすると胸の奥がちり、と痛む。サンドペーパーで撫でられているようなかすれた痛みだけど、これから大きくなっていくような気がしている。日に日に男らしくなっていく隣の友人をちらりと見上げて、自分でも知らない間に頬を赤らめていた。

     男に二言はない。というのをオレは撤回したい。
     ダチだと思えるわけがなかった。自分のことを慕い、毎日嫁のごとく付きまとってくるこいつに面倒臭さを感じていたのは最初だけで。決めたことに対してひたむきな姿、愛猫を撫でる時の人懐こい笑顔を見ているときの胸の苦しさに、ようやくこれが恋だと知った。千冬がキャアキャア言いながらすすめてくる恋愛ソングはどれも歯が浮くような歌詞ばかりでちゃんと聴こうとしたことは正直なかった。けれど、今は寝る前にひっそりと自分の現状と重ね合わせてはため息をついて布団に潜る始末。恋に没頭、溺れている。
     意識していなくても、千冬の身体が出会った頃よりあちこち丸みを帯びてきていることに気付いてしまう。性的なことに旺盛なサル、というほどではなくても好きな女子のそういう変化には当然興味は湧くし、日に日に豊満になっていく胸元を見てしまっては必死に平然を装うとしていた。酒なんて飲める歳じゃねぇけど、酒が入っていたら欲のままに押し倒して、なんて暴挙に出ていたかもしれないくらい、千冬が可愛くて仕方ない。

    「もー、場地さん早いですって。なぁ、ペケ~」

     オレへの不平を、頬を舐める黒猫と共有して無邪気に笑う様子を見ているだけで、心臓を真っすぐにハートの矢で射抜かれていく。寝そべったまま生白い脚をぷらぷらと揺らし、体の下に入れた腕の上にたゆんと柔らかそうに乗せていて。すげえ触ってみたい、と思わずにはいられないだろう。指一本も触ってないオレの忍耐力をナメないでほしいしすげえことだと思ってほしい。そしてこんな姿を誰にも見せないでほしい。

    「オマエさ、本当こういう格好でくつろぐの、オレの部屋だけにしろ。」
    「へ?」

     しまった、と口を押える。脳裏で反芻していた言葉が思わず零れ落ちていて、汚れた想いごとバレてしまったのではないかとじんわり全身が汗の膜に包まれる。千冬から目を背けていると、いつもの笑い方をしてからごろんと今度は仰向けにオレの膝の上に頭を置いてきた。だから、勘弁してくれってそれ。胸のふくらみが動くたびに形をゆるやかに変えていくのが目に毒だった。

    「場地さんの部屋だけ、かぁ。ひひ、特別扱いだ。」
    「…意味わかって言ってんのかよォ…」
    「わーってますって!へへ」

     絶対わかっていない、たった今の口約束はオレの醜い独占欲だって。そんな無防備で無責任で、誰にでもそうやって頷いてんじゃないかって矛先のない怒りが僅かに湧き起こる。でも、やけに上機嫌で頬を艶めかせながらピンク色にしている千冬が愛おしかったから全部許してしまいたくなってしまう。
     調子いいな、とデコピンをかますと千冬は痛え!と色気なく悲鳴をあげた。下着の見えそうな丈のまま胡坐をかき、全身で飾らないかわいらしさを表している千冬を見ていると力の限り抱きしめてしまいたくなったけれど、ダチのオレは一人奥歯を噛んだ。
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    イカロスの翼 第4話 目の前に聳え立つ大きな門に、夏油はあんぐりと口を開けた。
     重厚な木の門である。その左右には白い漆喰の壁がはるか先まで繋がって、どこまで続くのか見当もつかない。
     唖然としている少年の後ろから、五条はすたすたと歩いてその門へと向かっていく。
     ぎぎ、と軋んだ音を立てて開く、身の丈の倍はあるだろう木製の扉。黒い蝶番は一体いつからこの扉を支えているのか、しかし手入れはしっかりされているらしく、汚れた様子もなく誇らしげにその動きを支えていた。
    「ようこそ、五条の本家へ」
     先に一歩敷地に入り、振り向きながら微笑んで見せる男。この男こそが、この途方もない空間の主であった。
     東京から、新幹線で三時間足らず。京都で下車した夏油を迎えにきたのは、磨き上げられた黒のリムジンだった。その後部座席でにこにこと手を振る見知った顔に、僅かばかり緊張していた夏油は少しだけその緊張が解けるように感じていたのだけれど。
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