告白「やあ!久し振りだな、我が友ノースディン!」
今日も今日とて読書に勤しんでいたノースディンの元へ、美しい滑らかな黒髪の吸血鬼がやって来た。竜の一族の次期当主たる彼は、何かに行き詰まると親友であるノースディンによく助言を求めに来ている。ノースディンは鬱陶しげに眉間を押さえながらも、つい口角が上がってしまうのを必死に抑えていた。
「はぁ…ドラウス、今度は何だ」
「ああ、実は……俺、好きな人ができたんだ!」
ノースディンは紅い両目を見開き、言葉を失った。ドラウスが己の力を借りに来てくれたという事実に少し浮かれていたというのに、その内容はよりにもよって恋愛相談。こんな仕打ちは無いだろう。先程までの高揚感はすっかり冷め、ノースディンの心が凄まじいスピードで凍りついていく。目の前が真っ暗になる、とはこういう感覚なのか。ノースディンは一度止まった呼吸を何とか持ち直し、手元の本に目線を落として「そうか」とだけ答えた。それが精一杯だった。
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