悪夢 彼女の指を発見した時
指を置いた時
彼女が自分の足の下で生きていたと知った時
彼はどんなに絶望し、悔いただろう
光の届かない暗闇で溺れもがいて
必死で燃やした自分の身体が光るのだけが頼りだった彼が
――呪いや殺意や復讐の念だと思っていたその炎は
愛する妹への愛を思い出す時だけ義憤で昇華され
彼の行く先を照らす道標となった
どうして僕は、あんなに彼を見張っていたのに、それに気付けなかったのだろう。
どうして彼の生きる世界はこんなにも、非情で残酷なのだろう。
――ハン・ジュウォン警部補
よく通る声で呼び掛けられた記憶がフラッシュバックし、意識を揺さぶられる。びくりと身体が震え、ハン・ジュウォンは目を覚ました。
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