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    Satsuki

    短い話を書きます。
    @Satsuki_MDG

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    Satsuki

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    リョナッシュくんかわいそうすぎて最後天刻!

    「あ゙っ……!!」
     一瞬、背筋がぞわっとするような寒気と共に鋭い痛みが走った。強く掴まれていた腕を解放され、アッシュは床に倒れ込む。恐ろしくて、指先を動かすことができない。ドク、ドク、……そこに心臓があるかのように、痺れるような痛みが脈動し、アッシュは歯を食いしばって耐えた。縄で縛り上げられた両腕を胸に抱き込み、体を縮めて身を守ろうとする。
    「ほら、起きて」
     容赦のない手がアッシュを引き起こし、自分の方へと身勝手に引き寄せた。名も知らぬ男の汚らしい一物が顔に擦りつけられ、呻き声を上げる。そこはアッシュの唾液に濡れて、苦悶の表情を浮かべる少年を目の前にしてもなお浅ましくそそり立っていた。
     
     突然後ろから口を塞がれ、アビスの暗がりに引きずり込まれたのが最初だった。ナイフで脅されながら縄で縛られ……かなり興奮した様子の男に、下手な抵抗は危険だと判断したはずだったのに。
     舌を出せ、舐めろ。と言われたのはまだ我慢できた。けれども、口を開けて咥え込め、という指示はどうしても聞くことができなかった。頑なに口を開けないアッシュに、男は溜息を吐いてナイフをチラつかせた。
    「いい子にできないと、痛い目にあうよ」
     ……意志が強いのは、アッシュの長所だ。しかし、使い方を間違えると、頑固さはその身を滅ぼしかねない。
     拒んだアッシュの手を掴み、男はその細い指先にナイフを当てると、一切躊躇せずに爪をそぎ落としたのだ。

    「口を開けて」
     柔らかい唇に熱い肉が押し付けられる。戦慄くそこを今度こそ開き、アッシュは血を流している己の手を庇いながら男を受け入れた。途端、喉の奥を突かれて、体が勝手に逃げようとする。頭を掴まれて幾度も揺さぶられ、ごぼっと腹から酸いものが込み上げる。それでも男は手を放そうとしない。体を捩っても苦しくて、涙と胃液にまみれ、アッシュは必死に呼吸しようとした。アッシュくん、と男が呼んでいる。どうして名前を知っているのだろう。瞼が痙攣して、だんだん気が遠くなっていく。
    「アッシュくん、俺のアッシュくん……ああ……」

     ――気が付くと、アッシュは床に寝かされていた。顔にどろっとした液体がかけられて、舌の上にも妙な苦みが乗っている。ぼんやりと、胸に抱き込んでいた手を確認する。出血は止まっていたが、傷口はまだ赤く濡れていた。拘束されたままの手首が悲しくて、忘れていた涙がこぼれた。
    「があっ……!」
     悲鳴と、何かが倒れる音。ビクッと反応したアッシュに誰かが駆け寄って、優しい手つきで肩に触れた。
    「アッシュ……無事か」
    「ユー、リス……?」
     触れられた場所からあたたかな光が迸り、傷の痛みが癒えていく。アッシュは安堵と、どうしようもない悔しさに流れ続ける涙を止めることができなかった。ユーリスは黙ったまま、血に濡れた剣を床に捨て置くと、アッシュの顔をそっと布で拭ってやった。

    天刻!!
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    Satsuki

    PROGRESS脱走フェリをお散歩させる。フリートしてた話の進捗です。そのうち続きを書くと思います。
    シルヴァンはしゃがみ込み、床に倒れ伏したまだ歳若い男の首に手をやった。まだ温かなその体は、昼までは食堂で勤勉に動き回っていたものだ。
    「どうだ?」
    ディミトリが静かにそう聞くと、シルヴァン首を横に振った。
    「だめですね。首を折られてます」
    「あいつ、やるな」
    「腕の力は、弱ってなかったですもんね」
    「ああ……さて、それじゃあ追いかけるか」
     どこか楽しそうに言うディミトリに、シルヴァンは立ち上がって暗い廊下を見つめた。所々に燭台があるが、この冷たく寂しい道を、フェリクスはどこまで進んでいったのだろう。

     ハァハァと荒い呼吸を吐きながら、フェリクスは床に爪を立てる。辺りの様子を確かめるために首を大きく動かさなければならなくて、体中の筋肉が悲鳴をあげていた。簡素な服はまくれ上がり、硬い石造りの床に擦れた膝や腕には無数の細かな傷ができ血を滲ませ始めている。ここはどこだ?目線の高さが変わってしまったせいで、距離感が全く掴めない。おまけに、さっきから同じような場所を延々と巡っているような錯覚に陥っている。いや、それが錯覚なのか、本当に同じ場所から動くことができていないのか、それすら分からない。
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