たどりついた祝福はたどりついた祝福は
わずかな、かすかな、魔法の気配がした。
それは北の大地で千年を超えて生きている魔法使いである己にとっては、取るに足らないような些細なものであった。けれどそんな些細なものでも設定している領域を越えたものは、否応なく神経に触れてくる。掃除をなまけたゆえに、棚の上から舞落ちた埃に鼻をくすぐられるくらいのささやかさで。
数か月前までのフィガロであったなら、気配があると認識するだけで歯牙にもかけなかったであろう。不意をつかれなければおいそれと敗けることはない。
けれども、そのわずかな気配に対してここまで神経質になってしまうのは、今現在、このフィガロが住まいとしている屋敷にはもう一人住人がいるからであった。
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