I love every part of you「アルハイゼン、頼むよ、切ってくれ。大丈夫だから、なぁ、早くッ!」
己の外套を引き裂いて作った布切れで利き手の上腕を硬く縛り、カーヴェはそれをアルハイゼンの眼前に差し出す。
魔物の噛み跡が深く付き未だに血が流れている彼の生白い腕に、抜いた己の片手剣を当てがってアルハイゼンはぎり、と歯噛みした。
嗚呼、どうしてこんなことになってしまったのだろう。
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話は二日程前に遡る。
「もし良かったらこの秘境の調査、僕らも手伝うよ」
ここ最近、冒険者教会から幾つも秘境の調査の依頼を受けて忙しそうにしていた蛍にカーヴェがそう声をかけたのだ。
「……おい、俺を巻き込むな」
「たまにはいいだろ、君だってこの子らにはよく世話になっているじゃないか。それにここ最近は教令院も夏季休暇で暇をしているんだから」
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