【松戸と一刻堂さん】言霊遣いと妖怪少年【戸田くんのことが気に入った一刻堂さんと(だから合わせたくなかったのに!)となっている松岡くんの話】
【言霊遣いと妖怪少年】
「ところで君は……」
ぎろり、とこちらを睨むような鋭い目つきに、戸田は身体をわずかに強ばらせた。いつでもオカリナを取り出せるように、そっと懐に手を忍ばせておく。
戸田が今、対峙しているのは、言霊使いと呼ばれている人間である。黒ずくめの和装は、得体の知れない存在感をかもしだし、その視線はこちらの正体を明かしてやろうとばかりに鋭く戸田を射抜いていた。
一見、敵意は感じないが、まだ分からない。中には、敵意を隠すのが得意な人間もいる。男については、話には聞いたことがあっても、顔を合わせたのは初めてであり、共通の知人を介しての知識しかない。共通の知人こと、後輩の松岡は、よほどこの目の前の男が苦手らしく、『味方にいると便利だけど、敵に回せば僕ら妖怪の天敵のような人間』と、要注意人物として教えられていた。
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