「で。何か言うことは?」
少年は赤い髪を乱したまま、目の前の青年に問いかける。
本来でいえば少年が見上げるべき箇所にあるはずの青年の紫混じりの銀のつむじは、青年が店の扉を開けた直後に犬が潰れたような声をあげたまま走り出し即座に膝を折らせた少年の小さな手によってこれでもかと押しつぶされていた。
それを意にも介せずにこにこと——あるいはへらへらと笑う青年の膝下には、回路が焼け焦げ煙を放つ素人目にも「壊れている」と理解できる義肢らしきものがひとつ。
「壊れたから直してください!」
「そう言うのは壊したっつーんだよアホ七星!!」
言うが早いか少年はつむじを押さえる手にねじねじ体重をかけ始める。七星が絶えず笑っているのもあって見ようによっては微笑ましいそれは、今の『少年』にとっての最大出力ではあっても本来のものとは程遠い。なんでこいつが尋ねる時に限ってガキの姿なんだよ、と少年の唇がかたどった。
6059