トマトとトーマ照りつける強い日差しに、ジワリと浮かんだ汗が額当てへ伝う。
今しがた世話を終えた畑には鮮やかな緑が広がり、すぐ横の海から来る潮風に揺れてさやさやと音を立てている。葉が落とす色濃い影の中には、はち切れんばかりに膨らんだ夏野菜が覗き、収穫の時を今かと今かと待ち構えていた。
汚れた手を井戸水で洗い、日陰に設置されたベンチに腰掛ける。濡らした手拭いで汗をぬぐい日差しを避けるために羽織っていた上着を脱ぐと、こもっていた熱が散りほっと息を吐いた。
あらかじめいくつか摘み取ってタライで冷やしておいたトマトを手に取り、軽く水を切ってそのままかぶりついた。味付けも何も無いが、ヒヤリとした食感と共に口に広がる程よい酸味と濃い旨味に思わず顔がほころぶ。労働後に嬉しい何よりの褒美だ。
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