in classroom今日の第一声は悲しいことに「やばい、遅刻だ…!!」だった。
目覚ましをかけ忘れてしまい、起きたらすでに時刻はギリギリ。
私は慌てて制服に着替え、しつこい寝ぐせをむりやり押さえつけたのち、焼きたてのトーストをかじりながら急いで玄関を出る。
Niyomsil高校をめがけ、脇目を振らず全速力で走る。
食べながら走っているので途中でわき腹が痛くなる。
時々むせながらなんとか学校付近まで着いてスピードを落とした。
まだ登校中の生徒がちらほら見られる。私みたいに急いできた人もいるし、眠そうな眼をこすりながらまだ半分夢の中にいるみたいな子もいる。一方で友達と元気に話している子たちもいる。いつものNiyomsil高校の風景だ。
学校の時計を見上げれば始業まであと7分。
いつもよりは遅いけれど、どうやら急いだ甲斐があったようだ。
胸をなでおろしながら教室へ向かう。
ドアをがらがら…と開ける。もう教室には8割がたの生徒がいた。自分の席へ向かおうとしたが歩みを止める。私の席は窓側の後ろから3番目だ。そこに誰かが立っている。でも退くのを待つ時間もないな。あと3分で始業だし。仕方ない・・・と私はその生徒に近づいて声をかける。
「あのー、Por」
びくっとPorの肩が震える。
「あ、ごめん 驚かせるつもりじゃなかったんだけど」
「え、あ、ここ君の席だよね?ごめん」
「ああ、ありがとう」
私はお礼を言って席に座らせてもらう。机に物を入れて準備をする。
ふと気配を感じて顔を上げる。そこにはまだPorがいた。
あれ、もしかして私に何か話したいことでもあったのだろうか。
「あ、っとなにか用?」
「あ、僕のことは気にしないで!」
Porはそう言ってはにかんだけれど、どうにも様子がおかしい。
なんというか、どこか不安そうで、そわそわしている。
視線をあちこち彷徨わせて、まるで誰かを探しているかのように…見える。
正直気にはなるけど、気にしないで、と言われたのであまり詮索しないようになにか他のことを考えよう。
あ、そうだ。私の前の席のTiwsonまだ来てない。珍しいな。いつも私より先に来ていて生徒会長―Tinnと話し込んでいるのに。
始業まであと1分。彼は遅刻か、はたまた欠席か―などと考えたその時。
ガラガラガラ、とドアが開いた。
「あれ、今日は俺が最後か。」
Tiwsonがぼやきながら黒板の前を通り過ぎ、私の席の前に向かってくる。
さっきから落ち着きを失っていたPorを見てみる。もしかして、Tiwsonを待っていた…?
私の疑問はすぐ答えが出ることになる。
Tiwsonは自分の席のそばに立っているPorに声をかけた。
「あ、Porおはよう」
その瞬間。さっきまで不安そうだったPorの顔は花が咲いたみたいに、ぱあっと明るくなった。
「おはよう、Tiw!これ、ありがとう」
Porはハンカチか何かをTiwsonに差し出して自分の席へと帰っていった。小さくスキップをしながら。
ああ、Tiwsonに渡すものがあったのか。
でもそれだけじゃないことは明白だった。
だって目の前に座るいつも凛としていてクラス中が頼りにしている彼も。
照れくさそうにはにかんでいたから。
二人のことがなんだかいとおしくなってしまって、ホームルームは上の空だった。