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    ただ大好きな武道が「モデルの2人見てみたい」って呟いた事から武道の為だけにモデルをするイヌココと、遠くの人になっちゃったなーと寂しがって三ツ谷君に懐いてしまう武道くんの話です。

    書き切らないので供養しました。

    ランウェイで死ね 人々の喧騒の遠くに蝉の声が聞こえた。ビルがひしめき合う騒がしいこの街でも蝉達は必死に生きているのだ。街路樹に張り付いたそれらを横目に見ながら武道はコンビニに入った。自動ドアが開くと足元に冷気が流れ込んだ。短パンから覗く生足が涼しくて、さらに冷気を求める様に店の奥へと進む。綺麗に掃除された床にサンダルの音がみっともなく響いて武道は少し恥ずかしかった。前から横並びで歩いてくるカップルを避けた際に、雑誌コーナーの表紙と目が合う。人気女性向けライフスタイル情報誌の今週の表紙を飾るのは、見知った二人の男であった。
     絡み合う様なポーズでカメラを見据える二人のうち、白いシャツを着た方が乾青宗。生まれ持った色素の薄い天使の様な髪に抜群のスタイル、ビスクドールを思い浮かべる精巧で美しい顔を持ったモデルだ。口数が少なく感情が読めないところがあるがそこもミステリアスであると女性から人気を博している。彼の顔には大きめのケロイドがあるが、それを隠す事ない堂々とした表情と彼の圧倒的顔面力に魅了される者も多い。
     そしてもう一人。乾に手を回す様に写る黒いシャツを羽織った方が九井一だ。痛み一つない艶やかな黒髪に白い肌がよく映えた。切れ長の目元が特徴的な中世的な美人である。ニヒルな笑みを浮かべるこの美貌の青年もまた、乾と共に活動するモデルだった。
     二人はある時突如として表舞台に現れた。事務所からの強い押しも七光りも無く純粋な容姿美だけでモデル界に超新星のように現れた二人に世間はどよめき瞬く間に話題となった。多くのテレビ会社から「二人の特集を組みたい」と小さな事務所に毎日のように電話が鳴り響いたが、社長は首を振らなかった。これは二人の存在を勿体ぶっている訳でも社長が変わり者な訳でもなく、当の二人がNGを出しているのだ。

     乾と九井が渋谷の街で友人と連れ立って出掛けていた時、二人は今の事務所の社長にスカウトされた。二人には相手さえして貰えず、縋るような気持ちで社長は二人と一緒に居た人の良さそうな青年に無理やり名刺を渡した。
     翌日事務所には一本の電話があった。昨日とは打って変わってやけに機嫌の良さそうな九井という青年からの話に耳を傾け、その日の午後には二人を事務所に呼んでいた。改めてじっくりと見ても、彼らは本当に作り物のような顔立ちをしていて同性であっても思わず見惚れてしまう程だった。
     焦るように社長は契約書を取り出し、二人の前に置く。その際に二人から、いや主に九井から条件が出された。スカウトされたという自信から此方の足元を見て、ギャラを高く要求する者も少なくはなかった。今回もそんな事だろうと高を括り、笑みを浮かべる九井の話を聞いた。

    1、テレビやラジオ、実声を通しての発言が求められる媒体には一切出演しない
    2、外泊が求められる仕事は一切しない
    3、仕事は全て乾青宗、九井一の両人併せてのみとする。その為、それぞれ単独での仕事は一切しない。

    「……これで全部?」

    「はい、コレがこっちの契約条件です」

    「…ギャラとかの話はいいの?歩合でも月給でも良いけど」

    「金は別に」

     あっけらかんと話す九井に、社長も側に待機していた社員も拍子抜けした。変わった契約内容であり、モデルとして仕事を割り振るには少し厳しい点も多々あったが、持ち上げた契約書越しに二人を盗み見る。まるで芸術品だ。事務所はそれに全面的に了承し契約を結んだ。足早に事務所を立ち去る後ろ姿を、未だ夢心地の社長はずっと見つめていた。二人の連絡先を携帯に登録すると、惚けてる場合ではないと山の様にある書類に手を伸ばした。


     本人同士の渾名から取ってファンは彼らを“イヌココ”と呼んだ。二人が表紙を飾った雑誌は即予約終了、特集が組まれた情報誌は重版出来となった。イヌココは常に二人での仕事しかやらなかった。乾が一人でメンズメイクの仕事を受けることも、九井が一人で大手アパレル企業の仕事を受けることもなかった。二人は常に一緒。それがまた若い女性ファン達の心を掴んだのだった。
     乾が着た服は飛ぶように売れ、九井が使用したグロスリップは完売続出となった。日本の若者の感性にあったのか二人は瞬く間に人気を博し、今やコンビニや書店で見掛けない日は無い。

     武道は棚に雑誌を戻し、値引きされたパンを何個か購入しコンビニを後にする。相変わらず外はむわっと暑くて家に帰るのも億劫だ。額から垂れる汗を半袖から伸びる腕で拭い、片道10分の帰路に着いた。

     何年もブリーチしていない武道の黒髪に太陽が焼き付く。キャップでも被ってくればよかったと少し後悔しながら、蒸れるスニーカーを動かす。前に見えるバス停で男数人が楽しそうに騒いでいた。
    「バス間違えてねぇ?」
    「チェックイン4時っしょ、余裕だろ」
    「マジで計画性ねえわ俺ら」
     この暑さを物ともしないように大きく笑う姿が、武道には眩しくて堪らなかった。若えなあ…。俺もそんな時あったなあ、友達と居れば何しても楽しくてずっと笑ってて…。

    「な、三人で来週海行かね?」

    「ココがホテル取ったって。お前海行きたいって言ってたろ」

     頭にふと過ぎる、どうやっても聞き慣れた二人の声だ。武道は逃げる様に早足でバス停を通り過ぎ、見上げると天にまで届きそうな程高いマンションへと入っていった。品の良い顔をしたコンシェルジュが武道をマニュアル通り出迎える。上等なスーツを着こなす彼女に比べ、縒れたTシャツを着る自分がひどく恥ずかしかった。武道はコンシェルジュの呼び掛けに答えずエレベーターへと飛び乗る。愛想の無い自分に嫌気が差した。
     目的の階で降り、一番奥に面した部屋に向かう。住み始めて二年経つが、一向に慣れない踏み心地の良い床を歩きルームキーを取り出した。
     身の丈に合ってないことは分かる。毎日顔を合わせるコンシェルジュも、たまにすれ違う会社員も、みんなが武道を笑っている様で嫌だった。閉じた玄関からガチャンと鍵が締まる音がした。お気に入りのこのスニーカーとは何年の付き合いになるだろうか。そろそろ買い換えないと、同じやつがいいな。靴を脱ぎフローリングを踏む。

    「ただいま」

     武道のはっきりとした声は静寂に飲み込まれ、留守の家からは誰の返事もなかった。リビングまで続く廊下が、やけに果てしなく思えた。



     ソファで携帯を触っているうちに寝てしまったんだろう。武道が目を覚ますと既に外は暗闇に包まれており、部屋にぼんやりとした自然の光が差すばかりであった。伸びをしてからゆっくりと立ち上がり、カーテンを閉める。リビングの電気をつけようとテーブルの上のリモコンを探そうと手を伸ばした時、パッと部屋が灯りを灯した。驚きの余り声が出ず、静止する武道の肩に優しい重さが伝わる。

    「なーんで暗いんだよ」

    「寝てたのか?冷えるからせめてなんか掛けろ」

    「お、おかえり…」

     先程雑誌の表紙を飾っていた顔と同じ物が目の前に広がる。メイクをせずとも美しい顔立ちを持つ二人が己に縋るようにくっついてくるものだからいくら見慣れているとはいえ圧倒される。

     モデルとして名を馳せるイヌココ、もとい乾青宗と九井一は、この花垣武道の恋人であった。男同士で、三人で、という多くの違和感や常識外れなことはあったが当の本人達が紆余曲折を経て落ち着いたところが現状なのだ。本人は知らぬ所で競争率が高かった武道を、九井が囲んで乾が落とした。愛を毎日のように囁いて分かりやすく甘やかした。微かにただ確かにじりじりと染み渡る二人からの愛に武道は最初は戸惑ったが、気づいた時には武道も二人を想っていた。離して欲しくないと、ずっとそばにいて欲しいと願った。みっともなく自分達に縋る武道を見て、二人は胸にこみ上げてくるものがあった。今まで味わったことのない様な達成感であった。
     乾と九井にとっては花垣武道という男は聖人君子であり神であり全てを失った自分たちにとって世界だった。大袈裟ではなく、そう思っている連中も武道の周りでは少なくないだろう。憧れや相棒、親友、恩人を出し抜いて武道の恋人という立場を勝ち取ったのだ。

    「俺らもずっと好きだった」

    「3人で生きようぜ」

     欲しい言葉を沢山あげた。腕の中の武道は幸せそうに顔を赤く染めて笑っていた。乾と九井の狩りは無事勝利を収めた。







    「え、三ツ谷くん?」

    「…!タケミっち!?」

     どう見ても俺には合わない古着屋に入ってしまったと後悔して、店員に失礼の無い様に出ようとしていた時だった。真剣に服を見るスタイルの良い銀髪の人物に見覚えがあった。おー三ツ谷くん、とかつての先輩に駆け寄る武道よりも素早く三ツ谷が此方に向かい武道を抱き締める。急な事で驚いた武道は三ツ谷の背中を軽く叩いて名前を呼ぶ事しか出来なかった。

    「お前今まで何してたんだよ!連絡しても返ってこねーし」

    「え、ええ、あ。携帯壊れちゃってすみません、買い替えに行ったんですけど連絡先とか同期できなくて」

    「はぁ…?………今どこ住んでんの?前のアパートいねえよな」

    「今は」

     と、現在の住まいを口にしようとしたが、武道はふと思い止まった。俺、ココくんとイヌピーくんと付き合ってる事誰にも言ってないんだ。そう自覚すると突然舌も頭も回らなくなり口からは情けない母音だけが零れ落ちた。

    「…なーんか事情ありそうだな」

    「えっ」

    「顔に書いてある。全部吐くまで逃さねえからな」

     語尾にハートが付きそうなほど甘くそう武道の前でにこやかに笑った三ツ谷に、武道は思わずハイと返事をしたのだった。


     二人は古着屋の近くにあるカントリー風のカフェに入り、案内された奥まった席に座った。カフェの明るい雰囲気に移され、呑気にデザートメニューと睨めっこをする武道の目の前で、三ツ谷は自分の想像以上に動揺していた。三ツ谷が武道も最後にあったのはいつだったろうか。週に何回かどちらともなく連絡を交わし、社会人二人の都合が合えば時間を調整して会っては遊んだり呑んだり、遅くまでツーリングをすることもあった。本人の口からではなく友人からの噂で、かつての彼女とは円満に分かれたのだと聞いた。
     武道と並んで立つのがお似合いだった可愛い子だった。良い子だったのに、と独りごちた。勿体ないと思ったのはどちらに向けてなのか三ツ谷本人にもわからなかった。彼女と別れたと聞いてからその噂を裏付けるように、武道との約束が取れやすくなった。三ツ谷から誘えば基本的に二つ返事で了承した。海外で手広くやっているマイキーや、割りかし仕事に追われている千冬の冷めた顔を横目に、三ツ谷は武道とつい最近まではこまめにやりとりをしていたのだ。デザイナーというまだ自由が効く仕事柄だろうか、三ツ谷は己の仕事を改めて誇りに思った。

     だがある時突然、武道と一切の連絡がつかなくなった。送ったメールの返信は無いし、電話は繋がらず無機質な音声メッセージが流れるだけであった。何かしたのだろうかと、自分の行動を思い返してみたものの心当たりは無いように思えた。
     何度か上がったことのある古めかしいアパートに向かいインターホンを押し続ける三ツ谷に、隣人は怒気を含みながら「だいぶ前に引っ越した」と言った。バイクで迎えに行ったことのある武道の職場のレンタルビデオ店に確認すると「先月に退職しました」と間延びした声で言われそれまでであった。知り合いに尋ねてみたが皆三ツ谷と同じ状況であり、千冬は今にも泣きそうであったし、マイキーは心ここにあらずといったように呆然としていた。三ツ谷達は警察に相談したがなんの手掛かりも掴めなかった。
     仕事に追われ、合間に武道の動向を探る生活が長いこと続き、三ツ谷を始めかつての東万次郎メンバーには疲労が出ていた。今抱えている案件の参考になればと久々に渋谷を離れ、どこか上品で落ち着いた印象の古着屋へと吸い込まれるように歩き出していた。寝不足で回らない頭とうっすらとクマができた垂れ気味の目を奮い立たせ吟味する。そしてそこにひょっこりと現れたのが、三ツ谷の不眠の原因でもあった武道であったのだ。

     注文したアイスコーヒーとキャラメルパフェが届き、店員のイメージ通りにテーブルへと置かれた。パフェが目の前に置かれた武道は不服そうに「パフェのお客様?って聞かないんですね」と拗ね気味であったが、そりゃそうだと三ツ谷は少し鼻で笑った。
     アイスコーヒーにささったストローを噛み、一口飲む。火照った体を冷ますように喉にキンとした冷たさが伝わった。

    「で、タケミっちは今どこ住んでんの」

    「今……は…」

     グラスが汗をかいて木製のコースターを濡らした。武道もまた同じように汗をかいている。夏だというのに随分と半袖から覗く肌は白く細くて、三ツ谷はぼんやりとある二人を思い浮かべていた。目線を彷徨わせ、とにかく分かりやすい武道を焦らせるように三ツ谷はわざと大きい音を立てグラスを置く。びくりと一瞬震えた武道は、観念したのか重い口を漸く開いた。

    「今は、…〇〇区に住んでます」

    「〇〇区のどこ」

     パフェスプーンで品無くパフェの一番下のコーンフレークを掻き出す武道が、随分気まずそうに口にしたマンションの名前に三ツ谷は思わず声を上げて驚きそうになった。

    「おまえそこ月30万以上するところだろ。んな稼ぎねえよな、どうしてんだよ」

     詰め寄っているつもりは無かったが、ずっと引目に感じていたところを突かれた為、武道は自分がとにかく惨めで泣きそうになった。パフェを食べるでも無く弄っていた手を止め、スプーンをナフキンの上に置く。生クリームがナフキンに溶けて、じっとりと染み込んでいった。

    「別にキレてるわけじゃねえよ。連絡もとれねぇ、既読もつかねえ、仕事も辞めた。誰にも内緒で引越した。んで今は高級マンション。キレてねえよ?ただ何でってなるだろ」

     三ツ谷は優しく妹達を諭すようにそう言った。いや、ように努めたが怒りが言葉に滲み出ているのが伝わり、武道は唾を飲み込み背筋を真っ直ぐに伸ばした。程よく混雑している店内からは仕切り無しに談笑が聴こえてくる。ウチの旦那が、昨日行ったゲーセンで。飛び交う会話を盗み聞きしながら、武道は膝の上で固く握り締められた拳を緩く解いて三ツ谷を真っ直ぐに見つめた。

    「俺、ココくんとイヌピーくんと付き合ってるんです」

     性分なのか意気込んだ為か、カフェに響く程の大声をだしてそう切り出した武道とアイスコーヒーを盛大に倒した三ツ谷にカフェ内の視線が向く。お気に入りだったTシャツを黒々としたコーヒーが濡らしたが三ツ谷は気にならなかった。武道は鼻を膨らませ満足そうに誇った顔をしている。手が出そうになったのをぐっと堪えて、すかさず布巾を用意した店員に礼と謝罪を言い、三ツ谷はソファへともう一度深く腰かけた。ずりと尻が落ち、背凭れに寄りかかるように行儀悪く座る。三ツ谷にはもう訳がわからなかった。普通に女子と付き合っていた目をかけていた後輩が、突然連絡が取れなくなり、久々にあったと思ったら男と付き合っていた。こんな話を直ぐに飲み込める人間はこの世にいるのだろうか。

    「タケミっちお前今ココくんとイヌピーくんとって言わなかった?」

    「は、はい」

    「どっちと?何?言い間違い?」

    「いや、二人とお付き合いしてます。俺を合わせれば三人ともいいますね」

     しかも二人ときた。目の前のいつまで経っても幼気な後輩は男二人と付き合っている。何の冗談なんだと痛み出した米神を抑える。三ツ谷は新たに注文したアイスコーヒーを口に含むと喉を鳴らして飲み込み、武道をぴっと指差した。

    「経緯もきっかけも、全部話してみ」

     凄む三ツ谷に条件反射のように返事をした武道であったが内心号泣していた。
     尊敬する先輩に二人との馴れ初め、経緯を話し、今に至るまでを一から説明した。誰にも言ったことのないほぼほぼ惚気の様な内容であり、武道は話していて死にそうな程の羞恥であったし、三ツ谷も密かに好意を抱いていた相手の赤裸々な話に正直泣きそうであった。話終わる頃には、二人とも満身創痍となり会話だけなのに何故だかひどく疲れていた。

    「と言うことは、イヌピーに携帯水没させられて、九井が新しい携帯用意して、二人は家賃払うからお前は家の仕事してろってことで会社辞めて、知らない街だし出掛ける用もねえから俺らに連絡も取らなかったって事なんだな」

    「誤解がめちゃくちゃあるけど、大方…8割型そうです…」

    「アイツら今モデルか何かしてるよな」

    「うん…結構人気で」

    「知ってるよ、俺の仕事なんて毎日って位見るしな」

    「あっそっか、そうですよね!」

     完全に溶け切り原型を残していないパフェを武道は子供の様にズズと音を立てて吸った。せめてスプーン使え、と三ツ谷が指摘すると武道は気恥ずかしそうに笑って誤魔化していた。
     それにしてもだ。幾らなんでも武道は鈍感すぎやしないかと三ツ谷は思った。二人からの愛情はどう考えても常軌を逸している。他者から見れば異常である状況に、武道自身はなんの疑問も持たず暮らしているのだ。
     乾、九井共に、三ツ谷は然程関わり合いが無かった。二人は一番隊に所属した後、武道を総長とした黒龍でまた再び名を聞かせ始めた。武道の後ろにつき威圧する様に他者に睨みを利かす二人はまるで騎士の様であったし、同時に底のない独占欲が丸見えであった。千冬はそれにいつも文句を言っていたが歳上の二人からすると小型犬が吠えている様なものらしく相手にされていなかった。

     そう思えばあの頃から武道には妙に懐いていた。子供の様についてまわったし、親の様に見守っていた。未だ信頼の置けぬ二人を訝しげに思う東卍メンバーであったが、当の本人の武道が友人が増えたと楽しそうであったので何も言えずじまいであった。
    この関係はいつまで続くのかと三ツ谷は気を張っていたが、それも杞憂で東卍が解散する辺りで黒龍も実質解散となり武道と二人の仲は途絶えた。かの様に思っていたのだが、事実は違っていたらしい。
     武道の囲い込みに実質成功したのだ。長い時間をかけてゆっくりと二人の思考に染められた武道には何が正常で異常だかの判断があまりつかなくなっているようだ。目の前で溶けたパフェをちびちびと飲んでいる武道を見て、三ツ谷は今日一番の大きなため息をついた。



     三ツ谷と別れる頃にはもう辺りは薄ぼんやりと暗くて街頭がチカチカと光出していた。携帯を確認すると乾と九井からの通知で埋まっていた。それもそう、何故ならこの携帯は二人と先程追加した三ツ谷の連絡先しかないのだ。メッセージアプリを開くと、三人のチャットグループでは永遠に武道の所在を聞く文面が続いた。着信の通知も合わせて50以上もあった。自宅へと歩きながら武道は片手に電話を掛ける。1コール目で着信音が切れ九井が出る。

    「今どこ?」

    「コンビニの前っスね」

    「……もう帰ってんの?」

    「あと10分位で着くと思います」

    「…分かった気を付けてな」

     九井の奥で乾の珍しく荒げた声が聞こえたが、武道が言及する前に通話は切られてしまった。




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    kk_snz_

    MOURNINGヒモな真i一i郎くんと、初恋を自覚する若i狭くんと、女の子が好きな武i道の話。
    あんまり誰も幸せにならない予定
    シリウスが見た夢- シリウスが見た夢 -
     酒の匂いと上司からの説教、後輩の終わらない自慢話に耐えられなくなり、気付いたら店の外へでていたらしい。長年勤めた社員の送別会とは言え、明日、俺は早番で、携帯で時間を確認すると、思わず溜息が漏れた。先ほど気の利く女子大生バイトの子が追加注文をしていた様子から、まだまだ居座るつもりなのだろう。ラストオーダーまで1時間以上もある。仕切りなしに届く友人達からのメッセージを一通り返事をしてから、覚悟を決めてもう一度暖簾をくぐろうとした時、甲高い女の叫び声が聞こえ反射的にその方向に振り向いた。
     
     酔っ払いか何かに絡まれているのであれば、助けられるかはさておき声を掛けようとも思ったが、どうやら恋人との喧嘩のようだ。かなりキツイ罵声を男に浴びせ、男はそれに言い返すことも手をあげることもなくただ黙って女の言葉を聞いている。ヒートアップする一方的な喧嘩に行き交うサラリーマン達が囃し立てては通り過ぎていく。夜の街ではよく見るこの光景に終止符を打ったのは女の方だった。まさに良い音、と表現できる音が俺の耳まで届いたと思ったら、女は既に踵を返しいかにも怒っているという足取りで立ち去っていき、残ったのは立派な平手打ちをされた男だけだ。
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    kk_snz_

    MOURNINGただ大好きな武道が「モデルの2人見てみたい」って呟いた事から武道の為だけにモデルをするイヌココと、遠くの人になっちゃったなーと寂しがって三ツ谷君に懐いてしまう武道くんの話です。

    書き切らないので供養しました。
    ランウェイで死ね 人々の喧騒の遠くに蝉の声が聞こえた。ビルがひしめき合う騒がしいこの街でも蝉達は必死に生きているのだ。街路樹に張り付いたそれらを横目に見ながら武道はコンビニに入った。自動ドアが開くと足元に冷気が流れ込んだ。短パンから覗く生足が涼しくて、さらに冷気を求める様に店の奥へと進む。綺麗に掃除された床にサンダルの音がみっともなく響いて武道は少し恥ずかしかった。前から横並びで歩いてくるカップルを避けた際に、雑誌コーナーの表紙と目が合う。人気女性向けライフスタイル情報誌の今週の表紙を飾るのは、見知った二人の男であった。
     絡み合う様なポーズでカメラを見据える二人のうち、白いシャツを着た方が乾青宗。生まれ持った色素の薄い天使の様な髪に抜群のスタイル、ビスクドールを思い浮かべる精巧で美しい顔を持ったモデルだ。口数が少なく感情が読めないところがあるがそこもミステリアスであると女性から人気を博している。彼の顔には大きめのケロイドがあるが、それを隠す事ない堂々とした表情と彼の圧倒的顔面力に魅了される者も多い。
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