幸せの対価 皆んなから俺の記憶だけ無くなった。タイムリープの代償なのか、幸せを望みすぎた俺への罰か。
行く先々で初めて会った顔をされる。SSモーターズへバイクを持って行けば「いらっしゃいませ」と真一郎くんが、イヌピーくんは知らんふりで整備をしている。ドラケンくんもチラリと俺を見て、業務に戻る。
「このバイク、もう乗らないので…差し上げます……」
「え、お客さんこれ」
「っ、それじゃあ!」
急いで店を出て走る。後ろで声が聞こえるが知らない知らない知らない。滲む汗も目から溢れたものも知らないと必死に走った。ミッションコンプリート。自分に言い聞かせた。
数日後、何もやる気がせず、寝転んでいたところに電子音が部屋に響く。
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