透明人間がよかった 2 どっ、と講義室の後ろで笑い声が上がる。
ヘッドフォン越しにも届いた賑やかにスマホから顔を上げた。
気がつけば窓はすっかり緑一色だ。
風が強い。はためいたカーテンが視界に威勢よく割り込んだ。窓を閉めた方がいいか。ちらりと辺りを見回してみたが、俺以外に気にしている人間はいなさそうだった。
始業まではあと五分足らずといったところだ。
この講義は出席代わりのレポートさえ提出していれば単位はかたい。要点をおおよそレジュメで抑えておけば講義中は他の課題を消化する時間にもってこいだ。課題はなるだけ大学にいるうちに終わらせておきたい。バイトが終わったあとに眠気と戦いながら取り組むのは効率が悪いと近頃学んだばかりだった。
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