休息会社帰りの地下鉄、偶然空いた席に、周りはサラリーマンばかりだから気にせず腰を下ろした。終着駅まで行くから、座れるのはありがたい。
二駅揺られ、客が降りていく何気ないいつもの景色。誰が降りようと乗ろうと気にしないはずなのに、その駅で俺は何となく顔を上げた。
隣に座っていた奴が「やべっ」と呟き、急ぎドアに向かう。一番最初に乗り込もうとしていた女性にぶつかり、謝りもしないまま去って行った。
その女性は口の動きから「った」と言ったが、気にせず電車に乗り込む。
その方向を見ていた俺は、息を止めていた。
ミカサだ。
髪の長さは肩に付かないくらい、薄紅色の口紅を塗っている。顔つき、格好からして社会人。
ミカサはそのまま空いている俺の隣の席に腰を下ろし、スマホを見だした。
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