忙しい週末を過ぎた休日、酒を飲んで眠ってしまい、酒瓶が転がる部屋にインターホンの音が響く。
「んぁ……やべ……今日だったか……」
適当な部屋着のまま、女一人暮らしのマンションの扉を開けると自分よりも高い位置に綺麗な顔が現れる。
「……今日からよろしくお願いします」
「おー!よく来たな!ちょっと散らかってるけど入ってくれ」
「……お邪魔します」
酒瓶が転がる部屋に一瞬顔を顰め、男は脱いだ靴をきっちりと揃えて入ってきた。
昔から家族ぐるみで付き合いのある藍家の息子の藍湛は魏嬰にとって甥のような存在だ。会ったのはかなり久しぶりで大きくなり過ぎて一瞬誰だか分からなかった。
(昔は儚げな美少女って感じだったのに、男になっちゃってまぁ……)
逞しくなった背中を眺めぼんやりと思う。
今回、藍湛を家で預かる事になった理由は2つある。1つは藍湛の両親が転勤になり、いくらしっかりしていると言っても高校生の息子を1人家に置いていくのは不安があった事。もう1つはついでに社会人になり、更に生活習慣が乱れている魏嬰と藍湛を一緒に暮らさせる事で少しは見習えと言う事だった。
いくら魏嬰とはいえ、女と思春期の男子高校生を同居させて何も間違いが起きないと信じられているのは藍湛が藍湛たる故だろう。
(へっ!誰が矯正なんかされるか!むしろ品行方正な藍湛にすこーしだけ気の抜き方を教えてやろうじゃないか!)
「魏嬰」
思考に耽っていると酒瓶を片し終えた藍湛に声をかけられた。
「あ、部屋片付けてくれたのか?ありがとな!」
「……うん……その、すまない。見てしまった」
気まずそうにそっと差し出されたのはそこら辺に転がしていた下着だ。
「あー下着?いいよ、そこら辺に置いておいて」
「……君は、私と共に暮らすならもう少し恥じらいを持って欲しい。それに、そんな格好で扉を開けないで」
そんな格好、とは今着ている緩々のキャミソールと短パンの事だろうか。
「えー?この格好が1番楽なんだよ。気にするなって」
「せめて上着を羽織って」
着ていた薄手の上着を脱ぎ、魏嬰に羽織らせる。仕立ての良さそうな服は手触りがよくいい匂いがする。
「はは、ありがとな。あぁ、そうだ。お前の部屋に案内しないとな」
貰った上着に袖を通しながら藍湛を見上げると視線を逸らされる。
(なんだよ、久しぶりに会ったんだから、もっと愛想良くしろよな!)
説教ばかりしてないでもう少し可愛い反応を期待していたが、藍湛は昔からこんな感じだったと思い直す。性格が昔のままなら部屋に用意してある物にも期待通りの反応が得られるかもしれないと口角を上げた。
「ここの部屋使ってくれ!中の物も好きに使っていいからな〜」
「うん……っ……!?」
部屋の中を見た瞬間見開かれた切れ長の目にニンマリと笑う。
「ん?どうした?」
「……部屋に何かがいる」
「あ、これ?ふふ、ラブドール。あ、勿論新品な。知り合いに押し付けられたんだけど俺は使えないだろ?だからお前にやるよ。好きに使ってくれ」
「必要ない!」
「まーまー、置くとこも無いしさ。ここ置いといてよ。な?」
「……」
居候をしている手前、それ以上何も言えなくなったのか藍湛は口を噤んだ。
「ほら、荷物片付けちゃえよ」
「……うん」
その夜は酒のつまみばかりを作ろうとする魏嬰を見かねて、藍湛が手料理を振舞ってくれた。良い所の坊ちゃんにしては家事が一通り出来るらしく。料理も掃除も、魏嬰の下着を見ては顔を顰めているが洗濯もこなしてくれて有難い限りだ。
同居を始めて数日が経った。
「らんじゃぁ〜ん……仕事やっと終わったよ〜なーツマミ作ってぇ〜」
突然クライアントが無理難題を押し付けてきて今まで作業に追われていた魏嬰はリビングのソファに居た藍湛にフラフラと歩み寄る。
「お疲れ様……徹夜明けに酒を入れてはいけない。寝て」
「え〜やだ。飲む。これを楽しみに頑張ったんだ。ちょっとだけ、な?お願い」
「……わかった。ただし少しだけだ」
「やった。その間風呂入ってくるな」
「寝てしまうといけないから、湯船には浸からないように」
「はぁい」
母親みたいだと思いつつ、家に来た当初よりもかなり態度が軟化した藍湛を微笑ましく思いながらシャワーを浴びる。軽く洗い、髪を乾かすのは面倒なのでそのままリビングに直行した。
「お、いい匂い」
「もう少しで出来る……魏嬰、いつも髪を乾かすよう言っているだろう。風邪をひく」
「飲んでる間に乾くよ、気になるなら藍湛が乾かしてくれ」
そう言うと、溜息をつきながら藍湛はドライヤーを持ってきてくれた。
少しぎこちないが優しい手つきで髪を梳き、温風を当てられると気持ちよくて強烈な眠気が襲ってくる。
「ん……藍湛の彼女になる奴は……幸せだな……」
「魏嬰、それは……」
藍湛が何か言いかけたが、魏嬰の意識は闇に落ち、その続きを聞くことは叶わなかった。
 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
首筋にかかる暖かい風が擽ったくて薄らと目を開ける。
(……?なんだ?)
風の発生源に視線を向けると、艶やかな黒髪が見える。そこには魏嬰の首筋に鼻を埋め、一心不乱に陰茎を擦る藍湛がいた。
(えっ……!?)
あまりの衝撃的な光景に開きかけた口を慌てて閉じる。咄嗟に起きている事がバレてはいけないと思った。
「はぁっ……魏嬰……」
態度が軟化とはいえ、いつもはツンツンとした態度しか取らない藍湛が今は自分に欲情して、目をトロリと蕩けさせている。服の上から胸を触られ、その控えめな動きがもどかしい。
(う……乳首勃っちゃう……)
今程家にいる時にブラジャーを着けていない自分を恨んだ事は無い。服の上からプクッと主張した乳首を起こさないよう極弱い力で撫でられ、震えそうになる体を必死で押えた。
「魏嬰っ……魏嬰っ……」
匂いを嗅がれ、昨晩風呂に入れていない事を思い出し冷や汗をかく。
「ん、んん〜……」
少し恥ずかしくなって、藍湛に背を向けるように寝返りを打つ。うっかり藍湛の手をソファと自分の体の間に挟んでしまい、熱くて大きな手が胸全体に密着する。
(あ……ど、しよ……また寝返り打つのも変だよな……やば……布が乳首に擦れて……♡)
仰向けの時よりうつ伏せの体勢の方が腰が揺れてしまうのを抑えられない。肺が圧迫されて上がってしまう息を堪えていると軽い酸欠で頭がクラクラしてくる。
項に当たる熱い吐息が段々と忙しなくなっていき、水音が大きくなっていく。イきそうなのだろうか。
(もう少し耐えれば……!)
1度イったら満足するだろう。歯を食いしばりながら耐えていたが、魏嬰が起きないと確信したのか藍湛の動きが大胆になってきた。
やわやわと揉んでいた手はいつしか胸を揉みしだき、服の上からギュッと乳首を摘む。ショートパンツがずり下ろされ、右手で扱いていた陰茎を足の間に差し込んだ。
(う、うそ……!?藍湛お前なんて事するんだ!?)
冷静沈着な藍湛とは思えない行動に実は起きているのがバレているのではないかと思ったが、今この状況で声はかけづらい。どっちにしろ魏嬰は声を殺して耐えるしかなかった。
興奮した藍湛にほとんど押し潰されるような体勢になり、腰を打ち付けられ柔い尻の肉が形を変える。足の間にヌルヌルと陰茎を擦り付けられ、陰核の裏に先端が当たり、声が出そうになった。
(や、やめっ……♡そこ、弱いっ……♡♡声出ちゃうっ……♡♡)
枕にしていたクッションに顔を押しつけ声を殺す。藍湛の吐息が耳に当たり、ゾワゾワして鳥肌が立ちそうだ。
「〜〜〜〜っ……♡♡」