「………エルシャール」
デスコールの低く落ち着いた声が、彼の名前を呼ぶ。その声音に込められた感情は、愛しげな響きすら感じさせるものだった。
仮面の下でどんな表情をしているのか、それは窺い知れない。だが、少なくとも先ほどまでの冷徹で無機質な口調とはまるで違うものだ。
そうして彼は──再びその名を呼んだのだ。
「エルシャール」
デスコールの声音には、紛れもない愛情と、そして憐れみが含まれていた。
エルシャールと呼ばれた男は何も答えず、ただ俯くだけだった。
デスコールは続ける。
あの日、あのとき、自分が彼に向けて言った言葉の数々を。
君は間違っている。そんなことをしても誰も幸せにはならない。私は君を止めなければならない。
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