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    冬祭り時空、クガアス(ただの仲良し)を書くつもりがなんか妄想過多の文になった。ほんの触りだけです…

    冬祭りおめでとう「…片付いた、か」
    今飛翔している里を越えれば隣国である。此処はいわゆる国境街で、この大陸で最も物騒な場所であるはずだ。隣との紛争は優に10年100年と続いており、休戦状態が長く続いた試しはない。今宵も境を破ろうと軍団が押寄せた。ならず者ならまだ良い方で、身勝手に正規兵が動き回ればタダ働き状態の俺たちでさえ寝る暇はない。

    祖国を滅ぼし流浪していた身に、ある日突然それが起こった。森で愛竜と眠っていたつもりだったが、目を開けると豪勢な造りの部屋の中…寝台の上だった。ほんの一瞬、長い悪夢から今しがた覚めたのかと期待してしまう程に、そこは恐らくはどこかの王城であり…人間の気配があり…まるで全ての時間が巻き戻ったかのように──俺は騎士として目を覚ましたのだ。そしてアスクという異国に、未来の文明の力によって召喚されたこと、この世界の兵力として自分は用意された存在であること…等々を伝えられた。正直、アルフォンス王子による説明の殆どを理解出来ておらず、他の面々も軒並みそう言ったふうであった。

    協力しようがしまいが、元の生活に蓄えが出来る訳では無い。今更殉死しようとも、己の罪は消えることは無い…しかし事実として。恐らくはどこかにあった尊い場所の記憶が、この地への縁を作ってしまったのだ。
    …受け入れるしか、無かった。


    同じような経緯で呼び出された、異界出身の兵は既に100以上居た。…懐かしく、そして後ろめたくなるような、記憶に新しい面々も。クーガー、会いたかったわ。どこに行っていたの?なんで行ってしまったの?… 俺を見るなり涙ぐむ高貴な、しかし心優しい少女に、俺は久方ぶりに頬を緩ませていたらしい。罪を犯しながら、それでも共に戦った仲間達をまた、俺は恋しがっていたのだ。──何かが融けていくような、それでいてむず痒くかなしい心地がした。



    気付けば、この国で働くようになって2年ほどが過ぎた。今しがた、この国を脅威に陥れていた1つの紛争が片付いた。ノールによれば──グラドがかつて研究したものに少し近いという──魔道科学とやらを発展させた文明の国、ニザヴェリル。これの内紛に半ば巻き込まれる形でアスクは同盟を組んだ。俺たちのような異界の兵は此処では不死であるが、しかし大規模にやられれば当然軍は持たない。未知なる力を持つ軍勢に俺は幾度も深手を負った。なぜだか痛覚すら鈍くなるという構造は少々厄介で、自分が動けなくなる状態であることに死ぬ間際まで気付けない。…気付けば体は動かせず、腕がどこかに跳んでいた。これを治癒させた者は若い英雄で、目を背けながら懸命に魔力を注いでいた。

    要はボロ切れになろうと痛くも痒くもないから、文字通り死ぬまで(死なないが)動ける人形だ。…祖国のために死ぬのだという、全ての騎士の願いを嘲笑されているのかもしれない。それでも帰る場所も仲間も、ここ以外にはない。

    同盟国(詳細にいえば同盟派閥)の人的な損害もさることながら、火山に打ち捨てられた遺体の山が如く、科学的な武具の残骸があちらこちらに拡がっていた。
    これは内紛だったとはいえクーデターであることに変わりはなく、彼らは勝者でありながら敗者である。
    …敗けた者は、戦の中で掲げた正義を全て罪として償わなければならない。例え手痛い裏切りを受けていようとも───それが敗戦国の末路であることは、分かりきっていた。


    さて、単なる偶然ではあるが──ひとつの戦が終わる時は、何故か決まって冬祭りに近い季節となる。この国は戦時中でありながら諸々の経費を削減しようとも祭事だけは忘れない。…そのような余裕があるのである。この国の祭事は闘技大会を必ず兼ねるようで、祭事のためだけにわざわざ異界から英雄を呼び出す。毎度のように誰かが来ては、会いたかった、会いたかったと知り合いであろう面々が浮かれた声をあげる。…声をあげたことはないが、見知ったものが突然遊泳のための軽装で現れた時は…流石に驚いた。仮にも王族がそうも容易く肌を見せていいものなのか、俺には分からないが…。

    そんなこんなで今年も誰かが呼び出された。俺はそういうものを逐一確認し回る性分ではないから、知るのはいつも後だ。あくまで作戦行動の範囲内でしか把握はしない。また竜人らが楽しくしているころだろうと思った矢先のことだった…


    「あ、あの…クーガーさん!」
    「…」
    「あれ…?気付いていない…?えっ、でもあれは確かに…」
    「…」
    「クーーーーガーーーさーーーん!私!私です!アースーレーイーですーーーー!」
    「…わ、わかっている!!す、少し……声が出なかっただけだ!」


    派手な原色の、雪山にでも登りに行くかのような重装備をした知り合いが、立っていた…………
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    祖国を滅ぼし流浪していた身に、ある日突然それが起こった。森で愛竜と眠っていたつもりだったが、目を開けると豪勢な造りの部屋の中…寝台の上だった。ほんの一瞬、長い悪夢から今しがた覚めたのかと期待してしまう程に、そこは恐らくはどこかの王城であり…人間の気配があり…まるで全ての時間が巻き戻ったかのように──俺は騎士として目を覚ましたのだ。そしてアスクという異国に、未来の文明の力によって召喚されたこと、この世界の兵力として自分は用意された存在であること…等々を伝えられた。正直、アルフォンス王子による説明の殆どを理解出来ておらず、他の面々も軒並みそう言ったふうであった。
    1988