ニ徹と癒しのバニーさん「えっと、私がこの衣装に着替えたら本当に元気になるんですか?」
真っ昼間にも関わらず、カーテンを閉めきった寝室は今日の天気が曇りだということもあり薄暗い。
夫婦共用のキングサイズベットの角に座った梓は夫の零から渡された衣装を手に取り、まじまじと見つめていた。
「うん。それを君が着てくれたら二重の意味でも元気になるから」
別の意味でも元気っていきなり下ネタだろうか。
うーっと小さく唸った梓は自分の真横に座る零の横顔を見るが、相変わらず老若男女を虜にするような麗しのご尊顔でつまり顔が良い。
ただ普段と違うことがあるとしたならば彼の青灰色の瞳の下にくっきりとした酷い隈が存在していることぐらい。
三時間前に夫が帰宅した時には今の状態に加えて顔色まで悪かったのだが二時間程、仮眠したお陰で顔色だけは復活しており肌艶もさほど悪くない様だ。
「着替えてもいいけどまだ昼間だし夜にしません?」
「やだ。今すぐ梓さんのバニーガール姿が見たい」
やだ、って6歳歳上なのにこういうところが可愛いというかキュンとなってしまうのは惚れてしまった弱味だろうか。
夫専用でチョロくなってしまう新妻の頬はポッと桜色に色付いて熱を帯びていく。
やわらかな頬を自身の手のひらで押さえると夫からのバニーになって、という圧と愛情を感じる熱視線に上目遣いで応えると、ふるふると身体を震わせた。
◆
「こ、これでいい?」
首もとに加えて、肩が剥き出しに胸元が大胆に開いている黒いボディースーツは世間一般でバニーガールと呼ばれる衣装で。
オプションとして白い垂れ耳を二つダークブラウンの髪に装着した梓は足元も気になるのか、衣装と同じく黒の網タイツを指で弄くっていた。
「はーっ」
「零、さん?」
妻のバニーガール姿を目にするなり深い溜め息を吐いた夫はベットで頭を項垂れておりもしかして効果がなかったのかと梓の顔が曇っていく。
「―――新妻の、可愛い奥さんのバニーガール、最・高っ!」
「えっ!?」
顔を上げた零の顔を見た梓はキャッ、と小さく悲鳴を上げると数秒後には夫の手により背後にあるベットに押し倒されていた。
「れ、零さぁん?」
目を合わせた夫の青灰色の目は―――うん。とても昼間に見せていいような視線じゃなくて。
ありありと夜に見るような獣の欲が見てとれて、「……元気になりすぎです」色々と諦めた顔になった梓は愛しい夫の背中に両手を伸ばしていく。
そしてギューッと抱きしめると自身の身体を心をすべて愛しい人へと委ねていった。