初対面珍しく童虎が沈んでいる。いつも騒がしい奴がおとなしいと不思議というより不気味だった。
「はー」
挙句に項垂れたまま溜息なんてつかれると、地雷を踏むと解っていつつも声をかけなくてはいけない気になってしまう。鬱陶しい湿った気配を感じるのはどうも苦手だ。
「どうしたんだ?」
「シオン」
情けない声で名を呼ぶ童虎に大きな溜息をついた。
「テンマがの…」
「テンマ?」
聞き慣れない名前に首を傾げた。テンマ、テンマ、と口の中で何回か呟いて思い当たる一人の子供に小さく頷く。童虎が気にかけている聖闘士候補生の一人だ。元気がいいのが取り柄のような、小柄な子供。
「それがどうしたんだ?」
「レグルスの嫁になってしまうかもしれんのじゃ」
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