(水麿)立つ場所を並べて 清麿が、もたれかかるように身を寄せてくる。横から肩口に頭が載せられて、その髪の甘い香りに胸の内が燃えた。
「……すいしんし」
すこし甘えた声に拗ねが滲んで、そこに戸惑いもかすかに揺れる。見えないけれど、視線もきっと揺れているのだろう。その手が水心子の手の指に触れそうで触れない位置に所在なさげにあって、こちらももどかしさを握った。
「……どうして……抱いてくれないの?」
不安が、水を張ったキャンバスに絵の具を垂らしたように広がった声音。それでも肩への甘えは確かなのだった。擦り寄りながらこんなふうに窺う様子はまるで猫のようで。
水心子の恋人の清麿は、今まで何度も夜のお誘いをくれた。
けれど水心子はそのたび断り続けてきた。
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