2024ダイヤ誕供養朝6時。ダイヤはいつものアラームの音で目を覚ました。空気がとてもひんやりとしていて、いつもならもう少し、もう少し……とずるずる布団の中で温まり続けるのだが、今日のダイヤは違った。いつもしょぼしょぼしている目はパッチリとしていて、まるで寝起きではないかのように頭がスッキリと、意識もハッキリとしている。電子時計に映し出される日付を見て、元々高鳴っていた胸が更に音を大きくした。そして窓から外を見て、一面に広がる真っ白な雪景色にまた心を躍らせた。
ひと通り興奮してから、枕元にある個包装の箱を見る。丁寧に紙を破き、箱の中から出てきた白と水色と薄い黄色のかわいらしいマグカップに目を輝かせた。ダイヤのとても好きなデザインをしているそのマグカップを大事に大事に両手で持って、ダイヤはリビングへと足を運んだ。
今日は12月25日。世間一般ではクリスマスであり、ダイヤにとってはそれと同時に己の誕生日でもある、年に一度のとてもとても幸せで特別な日であった。クリスマスプレゼント兼誕生日プレゼント、なんてことはなく、ふたつは別ものとしてそれぞれ用意される。先程のマグカップはクリスマスプレゼントであり、誕生日プレゼントは例年通りであれば今夜の夕食時に渡される。一日中ずっとワクワクしていられるので、ダイヤはこの日とこのシステムが大好きであった。
リビングでは母が朝食と弁当を作っており、ダイヤの足音に気が付くと使っていた火を一旦消して、「あら」と優しい笑顔でこちらを見た。
「ダイヤおはよう、今日は早起きでえらいねぇ」
「〜!♪」
おはようの気持ちをいっぱい込めた満面の笑みを母に向けて、そのままのニコニコ笑顔でマグカップを掲げて見せた。
「!!」
「ま、サンタさんからクリスマスプレゼントもらったの? かわいいマグカップだね、良かったね」
「〜♪」
「ふふ、じゃあ今日から牛乳飲むときはそれ使おうね」
「!♪」
顔洗っておいでとの母の言葉に頷いて、マグカップを机の上に置く。嬉しい気持ちでいっぱいの全身を洗面所へと向かわせて、ぱしゃぱしゃと顔をひんやりとよく冷えた水で洗った。タオルでぽんぽんと優しく水分を拭き取ると、またリビングへと戻った。
おかえり、朝ごはんできたよ、と笑う母の笑顔に、いてもたってもいられなくてリビングの自分の椅子によじ登った。ほかほかと湯気を上げる、目玉焼きとハムの乗った食パンと、ウインナーと、それから今日からのお気に入りのマグカップに入った白く輝く牛乳。あとは食パンたちとは別の皿に盛られた鮮やかなサラダ。そのキラキラな光景に耐えられず、ぐう、と鳴いた腹を抑えて、見て、くす、と笑う。きみもこのキラキラにワクワクしてるんだね。そうして目の前のキラキラに目線を戻して、いただきます、とは口に出して言えないから、ぱち、と両手をしっかり合わせて心の中で大きな声で、いただきます! と叫んだ。叫んでしまうほどにキラキラしていて美味しそうだったのだ。
ぶつ切り✂︎ここでおわり