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    komaki_etc

    波箱
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    北村Pの漣タケ狂い

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    komaki_etc

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    歩きながら書いたのでしっちゃかめっちゃか

    マヨネーズ マヨネーズがなくなった。唐揚げにつけすぎたかもしれない。
     小さい頃は、なんとなく苦手だったように思う。酸味のせいか、とろりとした舌触りのせいかは思い出せないけど、きっとブロッコリーのせいだ、と思う。施設にいた頃、夕飯に肉料理が出た時は、必ず付け合わせにブロッコリーがいたのだ。
     あの凝縮されたつぶつぶと、硬い茎が嫌いだった。歯の間に挟まるし、青臭いし、それはマヨネーズで覆ってもなかなか消えるものではなかった。
     ボクサーになってからは、それまでが嘘のようにブロッコリーを食した。嫌いだとか言ってる場合じゃなかった。食べるしかなかったから食べた。もう一生分食べたんじゃないだろうか。ささみとかツナとかゆで卵とか、組み合わされるものは大抵同じで、今でも容易に舌の上に味を再現できる。そこにはマヨネーズはいなくて、唐揚げにつけたりもしなかったから、冷蔵庫にもしばらくあのべこっとした容器を置くことはなかった。
    「ほら、タケル、たくさん食えよ」
    「チビ! それ食わねーならオレ様によこせ!」
     円城寺さんとアイツと、三人で食卓を囲むことは多い。手作りのありがたさというものが、近頃身に染みるようになってきた。円城寺さんはいつも腕によりをかけてうまいものを作ってくれる。俺は一人で揚げ物なんてやったことがない。こんなにたくさん、大変だったんじゃないだろうか。口に運んではありがたさを咀嚼する。
    「レモンとマヨネーズもあるからな」
     円城寺さんの唐揚げには、マヨネーズを付けなくないと思ってしまう。だって、せっかく味付けしてくれているのに、もったいない。それでもアイツと競うように大量に食べているうち、思い出したようにつけてみると、そのまろやかさに旨味が倍増して驚いてしまう。いわゆる味変だ。七味を混ぜると美味いというのも、円城寺さんから教わったことだ。
     あの頃より、たくさんの味を知った。唐揚げもブロッコリーも、マヨネーズなしで食えるけれど、なんとなく冷蔵庫に置いておきたくなってしまう。
     こうして少しずつ、なくてはならないものとかが増えてくのが、大人になってくってことなんだろうか。そんなことを考えているうち、目の前の唐揚げが横のヤツに取られていく。考え事をしてる場合じゃない。レモンの鮮やかな黄色に手を伸ばし、さっぱりと味変する。胃はまだまだ、満足しない。
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