Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    komaki_etc

    波箱
    https://wavebox.me/wave/at23fs1i3k1q0dfa/
    北村Pの漣タケ狂い

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 144

    komaki_etc

    ☆quiet follow

    らいありキス

    #漣タケ

    屋上で溢れる 二人きりになれる時間というものは、ほぼ無いに等しい。
     けれど、雷斗が一人でいる時間というのはめずらしくない。要は、そこを狙っていけばいいのだ。
     雷斗は特別扱いされている。一人でいたい時は一人でいさせてやろう、という優しさをかけてもらっている。もっとも、それは授業中だからお目付け役の二人も側にいられない、とか、そういう理由だからだけど。
     俺は授業を抜け出して、屋上に行く。こんなに天気がいいんだから、彼はきっとそこにいる。確信めいたものがあり、果たして彼はそこにいた。そよそよと風にあたりながら瞳を閉じている。これは彼にとっての呼吸だ。日々、放課後から調査ははじまる。彼に課せられている荷は重い。こんな瞬間でしか、肩の力が抜けないのだろう。
    「……んだよ、勝負ならうけねーぞ」
    「……そっちじゃない」
     こちらも見ずに雷斗は言う。俺の気配を察知してくれただけでもはや嬉しかった。
     俺は、雷斗の特別になりたい。
    「……こっちかよ」
     いつから、こんな関係になったのだったか。二人きりになれる瞬間を探して、勝負を挑んではかわされて。悔しくて、でもその強さが憧れで。俺も手に入れたい。俺を見てほしい。いつしかその欲求が、別のものになっていった。
     雷斗の側に寄る。彼の長いまつ毛がはばたいて、蜂蜜色の瞳と目が合う。得意げに笑うその瞳は、俺のことなんて何でもお見通しだと言ってるみたいだった。
     見つめあうのに飽きた頃、お互いの頬に触れ、ゆっくりと唇を合わせる。吐息からすべての感情が漏れてしまうかと思った。彼の能力が心を読み取るものじゃなくて本当によかった。もっとも、今の強さの彼に惹かれたのだから、そんな能力の彼の姿は想像できないけれど。
    「……っ」
    「はは」
     時折、彼からは電流が零れ落ちる。吐息なのか汗なのか、喜びなのか興奮なのかわからないけれど、唇の先から舌が痺れるその一瞬の痛みに、俺はいつも全身を跳ねさせてしまう。
    「ここには土がねーもんな」
    「……うるさい」
     土があったところで、口の中まで侵入させるわけにはいかないのだから、今と変わりはない。それでも、俺の身体まで土で出来ていなくてよかったと思った。唾液の代わりに交わされるその刺激が、彼の生命力そのもののように感じるからだ。彼を吸い取るように、その電流を受け止める。
    「マゾかよ」
    「違う」
     オマエを知りたいだけだ。雷斗の鼓動は俺の鼓動にかき消されて聞こえなかった。授業の終りを知らせるチャイムもそっちのけで、俺たちはしばらく、束の間の二人きりを味わった。
     誰にも言えない時間だった。
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    related works

    recommended works