#雨想版一週間ドロライ クリスマス「あしひきの山の木末の寄生とりて 挿頭しつらくは千年寿とくぞ――」
「大半家持か。流石だな。お前さん、これが何だか知っているのかい」
流石というなら、専門でも無いのにさらっと出典元を答えられる雨彦さんの方だと思う。それよりも。
「髪に飾るにはまだ少し早いけどねー。それ、ヤドリギでしょー?そのリース、どうしたのー?」
僕が昨日雨彦さんの帰りを待つよりも先に寝落ちてしまった時にはそのリースは飾られていなかったはずだ。
真っ赤な実が差し色にあしらわれた、ヤドリギの枝をぐるりと丸く形取ったリース。世界中の子供達が真っ赤な帽子のおじいさんの来訪を待ち望んでいるこの時期には確かにこの枝を使ったリースやオーナメントを見かけることがある。でも、僕はもう十九歳でクリスマスプレゼントを待ち望むような年齢でもないし、雨彦さんだってわざわざツリーやオーナメントで家を飾り立てるような性質とは思えない。突然現れたそれは、正直に言って今のこの家の中で結構浮いている。
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