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    ついった@117p_
    雨想だったり女体化だったり 表にあげるのを躊躇うレベルのパロディ類の絵や小説をなげます
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    終始モブ視点の雨想のようななにか。
    ずっとモブのコンビニ店員さんが出てくる。

    ##小説

     深夜のコンビニバイトは、給料の割にかなり楽な仕事だと思う。確実に面倒臭い発注の仕事が無ければ、日中や夕方ほど客足も多くない。都心から電車で約二十分、駅から徒歩十分という住宅街の中にぽつんと存在するこのコンビニに、深夜に客が多く舞い込むことも無く。かろうじて終電前後、帰宅途中のサラリーマンが夕飯を買いに店内に駆け込んでくる程度だろう。うちの店は原則として深夜の時間帯は必ず二人体制で行われるーー本当は防犯的な理由、らしいーーのだが、今日も今日とて店長は言い訳を重ねて私一人を店に残し、どこかへ去ってしまった。……つまるところ、暇だ。レジに映る時刻は現在二十四時。退勤までは、まだ六時間もあるのだ。

     そうして時間は過ぎ、時計の針が一時を指した頃。最後のお弁当を持ってきたおじさんのレジを打っている途中、静かな店内に軽快な入店音が響いた。誰か入って来たことを聞き逃すことは無いけど、この音量、どうにかならないのだろうか。電子レンジで温めていたお弁当を取り出し、お手拭きと箸、缶ビールと合わせて袋に入れて差し出す。急ぎ早に立ち去っていった人にありがとうございましたと声をかけて見送ると、颯爽とレジ前に青年が現れる。
     辛子色のパーカーに、黒いハットを深く被っているちらりと横から見える毛先は黒い。珍しい服装だなあ。そんなことを思いながら商品の入っていたカゴを受け取る。
     おにぎりが二つに、緑茶と惣菜パン。おにぎりの残りも、だいぶ少ないかもしれない。そんなことを考えながらバーコードを通していると、これもいいですかー?という声と共にレジ横に置いてあったみたらし団子が差し出された。甘いものが好きなんだろうか。
    「レジ袋は有料になりますが」
    「あ、一枚お願いしますー」
    「そうしますとレジ袋一枚三円を合わせまして、合計こちらの金額になります」
     どこかで聞いたことのあるような、透き通った声に似ているなと思った。男性にしては高く、可愛らしい声な気がする。レジの前についたセルフの精算機で会計を済ませてもらっている間に商品を袋に詰めておくと、電子マネーで速やかに会計を済ませていたらしい青年がにこりと会釈をして袋を手に取り、立ち去っていった。
     帽子の影から覗く、垂れた丸い瞳が記憶に残って離れない。絶対に、何かで見たことがある。あるはずなのに、あまりテレビを見なければ芸能人を追っかけたりするようなこともしない私にはその人が誰なのかをすぐ思いつく事ができない。絶対に見たことがあるはずなのに!今なら店内の他の客はレジから離れているんだからポケットからスマホを取り出して調べればすぐだろうに、ここで調べたらなんだか負けな気がして手が検索をかける事を拒んでいた。
    「……あ、あのー。すみませーん……」
    「はっ!すみません!お待たせ致しました!」
     いけないいけない、考え事をしていたらレジの前のお客さんに気が付かなかった。そうしていつの間にか出来上がっていた終電後の最後の帰宅ラッシュによる数人のレジ待ちの列を捌いている間に、つい数分前まで真剣に悩んでいたことすら忘れてしまって。
    (そういえば、何考えてたんだっけ。……ま、いっか)
     本当に気になっていたことならまた思い出すだろう。そんな呑気なことを考えていたことを、まさか数週間後ひどく後悔することになるなんてこの時の私は思っていなかったのだ。



    「いらっしゃいませー」

     バイトづくめの大学生の夜は長い。今日も今日とて店長のいない店で一人、丑三つ時だというのにちょこちょこ現れる客を捌きながら店内を掃除していた。大体数十分前に会計をした客を最後に、今この店の中には私しかいない。……本当に、この深夜の時間は店の売上に貢献できているのだろうか。講義の都合上昼にヘルプに入ることも無いから店の事情なんてわからないけど、あんまりにもお客さんが少ないと店の存続を勝手に心配してしまう。
     窓の外をちらりと見て、誰もいないことを確認し掃除機を裏から運び出す。今からこの作業を始めて、早朝までに来る納品までには終わらせなければならないから案外時間との勝負だ。きっと、店長がいたらこの仕事だけに専念できたんだろうけど。近くのコンセントにプラグを差し込んで、掃除機の電源ボタンに手をかけた瞬間。
     聞き慣れた店の入店音が響く。……げ、タイミング悪。そうして静かな足音が店内に響いたのを確認して、掃除機を隅へと寄せてレジの方へと向かった。
     社員証をかざして閉じていたレジを開ける。すれ違いになって姿を見ていなかったお客さんの方へちらりと目を向けると、そこには身長が自販機をも超えてしまうんじゃ無いかという程の大男が立っていた。でか!思わず声に出ししまうところだった。胸元にどこかの社名が印字されたきっとオーダーメイドであろうサイズの黒いツナギに、水縹色の髪を後ろに流したその大男はどこか浮世離れしているように見える。……とにかく、脚が、長い。その佇まいの異様さについついじろじろと見入ってしまいそうになるのを、レジ周りを整頓することでどうにか堪える。溜まっていたレシートのゴミを廃棄して、レジ袋の残量を確認し時間を潰していると、
    「お嬢さん。お会計、いいかい?」
    「あっはい!すみません、お待たせしました!」
     わりと注意深く聞き耳を立てていたと思ったのに。全然足音が聞こえなかった。気がついたら目の前に大きな影がかかっていて、礼儀として顔を合わせようとして前を向いてもツナギの中から覗く赤いシャツと、厚い胸板しか目に入らない。……この人、胸元開けすぎじゃない?鍛えられた胸筋のラインが目について、少し、いや、結構気まずい。それに胸元のアヤカシ清掃社って。清掃なのにアヤカシって、すごく失礼だけどちょっと怪しい。徐々に顔をあげて目についたのはヒトガタのついた数珠のネックレスに、まつ毛の長いやたらと綺麗な顔だ。なんていうか、どこから突っ込めばいいのかすら分からない。というか、見上げるの、首が痛い。
     商品の入ったカゴを受け取る。二リットルのペットボトルに、昨日発売されたばかりの女性向けの芸能誌。こんな人でもこういうの読むんだ、なんて思いながらレジ袋の有無を聞いて、スキャナーに通した商品を袋に入れる。まあでも顔の綺麗な人だし、彼女さんと住んでいるのかもしれない。お会計前に突然レジ横からこれも頼むとみたらし団子のパックを手渡された。……そういえばこの間もこんなことがあった気がする。コンビニでなくてもスーパーとか、なんなら大学の購買ですら買えるこのありきたりな団子、そんなに流行っているのかな。お団子を袋に入れて持ちやすいようにと持ち手を合わせて捻り、渡す準備をして待つ。
    「そういえば、」
     突然上から、いい声が降ってくる。まさか話しかけられるなんて、何か悪いことでもしたかな。焦る気持ちを堪え、顔を見上げて口を開いた。
    「あの、何かありましたか?」
    「あの掃除機、重曹水を含んだ布で掃除してやると綺麗になると思うぜ」
     それじゃ、と私の手からレジ袋をさらってすたすたと出口へと立ち去っていく。ありがとうございました、と後ろから声をかけたけど、届いたかな。なんだかすごく不思議な人だった。あんな変わった人、一度見たらきっと忘れないだろうから始めて見たということは最近引っ越してきたのかな。でも、どこかで見たことがあるようなきがするのは流石に気のせいのはずだ。二度目のデジャブに首を傾げながら清掃作業に戻ろうと、レジを一度締めて掃除機のほうへ向かう。
     ……重曹水を含んだ布で、掃除だっけ。謎の説得力があったし、とりあえず。スマホのメモ帳を開いて教わったことを入力しておく。
     退勤後、なんとなくそのメモを思い出してノズルを拭いてみたらかなり綺麗になって、次にあのお兄さんにあったらお礼を言おうと心に決めた。




     今日も今日とて、バイト三昧だ。といっても昨日までテスト期間が重なって、勉強のために一週間ほど休みをもらっていたから約七日ぶりの出勤だった。二十三時上がりのベテランのおじさんと入れ替わるようにシフトに入って業務を引き継ぐ。流石に久しぶりだったからと会計をこなしつつ新発売の商品や新規キャンペーンの説明をしてくれていた店長も、日付が変わってしばらくするとフライヤーを掃除していたかと思えばまたふらりと姿を消してしまった。くそ、本社に訴えたら勝つのはこっちだぞ。
     終電ラッシュを終えて数時間、店内は未だ静か。当たり前だ。今は平日火曜日の深夜三時。掃除機もかけ終えて、後は四時頃に到着する商品の乗ったトラックを待つだけだ。ちらちらと訪れるお客さんの対応をしながらレジ裏のタバコを補充する。一、二人しかいないとはいえ、店内にずっとお客さんがいるのだから下手にレジを離れられない。
     しばらくしてBGMだけが鳴っていたコンビニに冷えた空気と共に入店音が響いた。いらっしゃいませー、と反射で声をあげる。ちらりと入口を見る。
     あ、あの人!テスト前にバイト中に見かけた、あの黒いツナギのお兄さんだ。隣にいる黒い帽子のお兄さんも、たしか前に見かけたことがあるような気がする。そういえば、結局誰に似ていたのかを思い出すのを忘れてた。帽子のお兄さんが入口でかごを持って、もう一人に寄って行ったからきっと一緒に買い物をするのだろう。
    「雨彦さん、その雑誌、もうあるから要らないよー」
    「でもそれはお前さんが貰ってきたやつだろう?どうせなら、自分で買って見たいのさ」
    「もうー。そう言ってこないだも買ってきたでしょー。溜まってきた本、ちゃんと捨ててよねー」
     名誉のために言っておくけど、別に私が盗み聞きをしている訳じゃない。人の少ない店内、団体客があの二人しかいないから会話が筒抜けなのだ。特に、帽子のお兄さんは凄く声が通っている気がする。
     ……というか、雑誌をもらって来たって。編集しているのか、もしくはモデルとして出ているのか。掃除屋のお兄さんも相当美形だったし、やっぱり芸能人なのかな。いや、まさかね。そんなことを考えていたら別の作業着のお兄さんがレジまでやってきて、百五番と伝えられたので箱を取り、テープを貼って会計の終わったお客さんへ渡す。ありがとうございました、とレジを立ち去る男性を見送れば、例の二人組はレジから向かって左側にある惣菜コーナーを物色していた。時間も時間だ、めぼしいものは殆ど品切れてしまっていて、レンジで加熱して食べれるような加熱食品くらいしかもう残っていない筈。これがいいなー、これも美味しかったな、なんて会話が耳に入ってくる。さっきの会話も踏まえるに、きっと二人は一緒に住んでいるんだろう。男二人で同居生活、か。随分と仲がいいんだな、なんて思いながらちらりと二人を見る。帽子のお兄さんが持っていた買い物カゴはいつの間にか掃除屋のお兄さんの手に渡っていた。
    「今日は団子はいらないのかい?」
    「雨彦さん、僕がお団子好きだって勘違いしてるみたいだけど、別にあの時はたまたま食べたかっただけだよー?」
    「そうなのかい?随分美味そうに食べてたから気に入ったのかと思ったんだが」
    「もー。別に、普通に食べてただけだってー……」
     まさか、あの時買っていたお団子にそんな意味があったなんて。最近人気なのかな、なんて考えていたけど、ただこの二人の間で流行っていただけらしい。それだけ美味しそうに食べていたなんて、ちょっと見てみたいなんて思ってしまった。
     そうして一通り物色し終えたらしい二人が、レジの方に向かってきた。ちらりと顔を伺ってみるけど、やっぱり二人の顔を見ても誰だか思い出せない。でも、絶対どこかで見たことがある気がするのに。
     お願いしますー、という声と共に差し出された買い物カゴを受け取って、一つずつ商品のバーコードを読み取っていく。
    「レジ袋をーー」
    「あ、レジ袋大丈夫ですー。ねえ、ちゃんとエコバッグ持ってきたって言ったでしょー?」
    「そうだったな、悪い」
     そうして掃除屋のお兄さんがポケットから取り出した財布で会計を済ませている間に、帽子のお兄さんがエコバッグに商品を詰めていく。やたらと袋詰めがうまいから、もしかして同業者なのかな。そうして会計を済ませた掃除屋のお兄さんが荷物を持ち、レジを後にしようとしたところで思い出した。
    「あ、あの!この間、ありがとうございました」
    「ああ、掃除機の件かい?役に立ったようならよかった」
    「なにー、また何か口出したりしたのー?」
    「いや、掃除機の汚れが気になってな。少し助言をしただけだぜ」
     そう言葉を交わしながら去っていく二人に、ペコリとお辞儀をして見送る。男同士だというのにサラッと荷物を奪い取って自分が持ったり、お金だって何気なく自分が払おうとしたり、美味しそうに食べていたものをわざわざ買って帰ろうとしたり。いいな、ああいう人が彼氏だったらなぁ。まあでも、男の人同士だし、まさかね?やたらと仲の良かった男性二人組のお客さんは、しばらく私の中で話題に上がりそうだな、なんて思っていたのだが。



     ……まさかその次の朝。退勤して家に帰った後、テレビをつけたら見覚えのある二人がアイドルグループのメンバーとして番組に特集されているのを見て、思わず大声を上げてしまったのは仕方のないことだろう。ご近所さん、ごめんなさい。それにしてもテレビでインタビューされていた距離感よりも随分と近く見えたのは、気のせい、じゃないよね…?
     今後店にあの二人が来たら今まで通り店員として接することはできるんだろうか。そう思いながら、指はスマホに表示された315プロダクションのホームページ上を滑り続けていた。




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    117p_

    DONE12/24ドロライ「クリスマス」お借りしました。
    だいぶお題からそれだけどクリスマス要素があるので許されたいと思っています
    #雨想版一週間ドロライ クリスマス「あしひきの山の木末の寄生とりて 挿頭しつらくは千年寿とくぞ――」
    「大半家持か。流石だな。お前さん、これが何だか知っているのかい」
     流石というなら、専門でも無いのにさらっと出典元を答えられる雨彦さんの方だと思う。それよりも。
    「髪に飾るにはまだ少し早いけどねー。それ、ヤドリギでしょー?そのリース、どうしたのー?」
     僕が昨日雨彦さんの帰りを待つよりも先に寝落ちてしまった時にはそのリースは飾られていなかったはずだ。
     真っ赤な実が差し色にあしらわれた、ヤドリギの枝をぐるりと丸く形取ったリース。世界中の子供達が真っ赤な帽子のおじいさんの来訪を待ち望んでいるこの時期には確かにこの枝を使ったリースやオーナメントを見かけることがある。でも、僕はもう十九歳でクリスマスプレゼントを待ち望むような年齢でもないし、雨彦さんだってわざわざツリーやオーナメントで家を飾り立てるような性質とは思えない。突然現れたそれは、正直に言って今のこの家の中で結構浮いている。
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