「旅行」「桜」ドロライ「旅行」「桜」
揶揄いたい、触れたい、甘えたい、共にいたい。
想楽と想い合うようになって階段を一段ずつ登るように、あるいは転げ落ちるように欲を覚えた雨彦は次に、独り占めしてみたい、と想楽に言った。
「じゃあ旅行、行こっかー。二人で」
行き先もしたいことも雨彦さんが決めて、全部雨彦さんがしたいようにしてあげる、と。
「観光しなくてもいいのかい?」
雨彦が行き先を告げた時も、ふぅんと言ったきりで、客室に着いたあともサービスの一環で置かれた観光冊子を開きもせず、お着き菓子を摘む想楽に痺れを切らした様子で問いかける。いつも聞く想楽の一人旅の感想はどこそこに行った、あれそれをした、などバラエティに富んでおり、行った先を想楽なりに十分に満喫しているものばかりだったからだ。
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