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    めがねうろ

    @uromegane02

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    めがねうろ

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    雨想版一週間ドロライへ参加させていただいた作品になります。
    お題の「時計」をお借りしてます。

    ##雨想

    時計『収録終わったよー。タクシーで帰るねー。』 19:32
     今しがた入ったメッセージを確認し、雨彦はちらりとリビングの時計を見る。今日、想楽が向かったスタジオの場所を思い出し、風呂でも沸かすかと適当に広げていた雑誌を片付けた。


    『今終わった。』 02:06
     既読の表示がつかないことはわかっているが二人で棲むと決めたときの大事な約束だったからだ。トンッと鳴った通知音に思わず目を瞠る。
    『気をつけてかえってきてね』02:09
    『寝てなかったのか。』 02:09
    『ねてたよ』 02:10
     布団の中、眠そうに目を瞬かせながら文字を追っている様子が思い浮かび頬が緩む。
    『悪いな。起こしたか?』 02:11
     返事はない。本当にメッセージの通知で起こしてしまっただけなのだろう。普段なら就寝前には机の上で充電用のコードに繋がれている携帯電話をわざわざ布団の中にまで持ち込み、雨彦からの連絡を待っていたのだと思うと胸の奥が熱くなった。
    ── 早く帰ろう。
     そして、寝ている想楽には悪いがベッドまで連れ込ませてもらおう。人をこんな気持ちにしておいて独り寝なんてできる訳がないだろうと目を細めた。


    『クリスさんと賢くんと釣りに行ってきます。朝ご飯はお米じゃなくて、パン! 昼ご飯は期待しててねー』
     ダイニングテーブルのメモ帳には気の抜ける魚イラストと共にそんなメッセージが。寝起きの霞む目で時計を見ればもう昼近く、これなら乾いた食パンをつつくよりも釣果を待った方が良さそうだ。


    「明日は9時すぎには出るつもりだ」
     リビングで初めてできた後輩たちが出演するクイズ番組を見ていたら徐にキッチンからひょっこりと薄水色の頭が出てきてそう言うので、想楽は明日の自分と雨彦の予定を思い浮かべる。
    ── 僕は午前中オフで、雨彦さんは雑誌の撮影の後、クリスさんと合流してユニットのボーカルレッスンだったよねー。
    「んー、お弁当いるー?撮影スタジオでロケ弁はもらわないよねー。プロデューサーさん、用意してくれるかなー」
    「北村の弁当がいい」
     もともとそのつもりだったのか間髪入れずに答えが返ってきた。香ばしい香りが漂うマグカップを両手に持ち想楽の隣に座る表情も心なしかほくほくとしている。
    「はいはい。ちゃんとプロデューサーさんに連絡してよー?」
     雨彦からカフェオレを受け取り、自分から寄り添うようにさらに距離を詰めると雨彦の胸に頭を預けながら時計を見上げた。
    ── 9時に出るなら8時前くらいには起きなきゃねー。


    「ぁ、ちょっと、こんな時間からー?」
     ソファーに腰掛けようとした想楽を引き寄せ、雨彦を跨ぐように座らせた。明日の夕方までオフだからそういうことはするだろうな、と思っていたがまだ昼時に差し掛かったばかりで日も高く、羞恥の隠せない想楽はやんわりと雨彦の肩を押して遠ざける。
    「いいだろう?ひと月近く触ってないんだぜ」
    「だからってこんな……っん、お昼ご飯っ……まだ、なのにっ……」
     一方、雨彦はささやかな抵抗などものともせず、大きな手は明確な意思を持ってするすると不埒な手つきで吟味するように想楽の体を這いまわる。
    「あとで羊羹でも食うか。コラボでもらったやつ、まだあっただろう」
    「は、ぁ……おやつの時間には、んっ……終わらせてくれるってことー?」
     服を捲り上げ、露わになった白い肌をなぞるとさらりとした手触りから段々と艶を帯び、しっとりと吸い付くような感触に変わっていく。雨彦はこの、果物が食べてもらいたくて熟れていくような、いじらしい変化を感じるのを一等好んでいた。
    「いや?休憩を挟もうってことだ」
    「なっ……!?んぅ、ふっ……ぁ」
     愉しげに細められた目の奥に宿る獰猛な色を感じたのか、宥めるような抵抗から一転、必死に腕の中から逃れようともがこうとする体を一層強く抱き込み、息継ぎもさせないほどに荒々しく口付けた。
    「お預けされてた分、今日は俺の気が済むまで付き合ってもらうぜ」
     雨彦の作戦通り、酸欠と快楽でくったりと力無くもたれかかった体を音もなく抱き上げ足早に自室へ向かった。


     あれから気の向くままに恋人を食い散らかしていた雨彦だが、ついにベッドから蹴り出された。全身を赤く染め、快楽に溺れ息も絶え絶えだったというのにどこにあれだけの力が残っていたのか、汗ばんだ踵が掠った腰骨がじんじんと痛むが、腹の奥に溜まった熱はまだ食い足りないと渦巻く。とにかく宣言通り休憩にしなければいよいよ自室から締め出されるだろう。
     厚めに切った羊羹、よく冷えた水出しの緑茶、それから老舗の落雁にはこの後も付き合ってもらえるよう、ご機嫌取りの大役を務めてもらう。
     リビングにかかった時計をちらりとみた。この家のインテリアを揃える時にたまたま雑貨屋でみつけた、なんてことない普通の時計だ。ブルーグレーの文字盤と金色の針がなんとも自分達らしいと顔を見合わせ即決だった。
     時刻はちょうど八つ時にかかったところでそういうところは本当にちゃっかりしているな、とくつくつと笑った。



    出る時間、帰る時間、食事の時間、仲間との時間、それから……二人だけの時間。
    同じ時計で、同じ時を歩む。
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