みどさか 君を愛した僕の罪の無配SS 坂道の身体はボクゥを甘やかす。
甘く甘くして、トロトロになって、ボクゥはサカミチィの身体から離れられんくなる。
ボクゥは世界に行かなあかんのに、こんなところで裸になって、坂道とゴロゴロしている場合やないのに……。
坂道と一緒にいるとなんだかひどく柔らかくなってしまって、ぴったりとその肌にくっついて、どこにも行けんくなる。
坂道の柔らかい髪に頬っぺたをくっつけてすりすりとしたり、その背中の筋肉や骨のラインを一つ一つ指で辿ったりしていると、いつの間にかボクゥは気づかんうちにいくつもの夜を越えてしまう。
坂道がボクゥを見て、そっと笑う。眼鏡の奥の目がボクゥをじっと見た後に、ゆっくりと細められるとそれだけで胸の奥がぎゅうっと痛くなって苦しくなる。でも、苦しい筈なのに坂道のそんな表情を何度も何度も見たくなって、ボクゥはついつい坂道なんかの顔をじっと覗き込んでしまう。
「御堂筋くん」
サカミチィのボクゥを呼ぶ声。
「御堂筋くん、大好き」
ボクゥの気持ちなんて何にも知らずに、坂道はそんなことを簡単に口にする。
好きなんて良く分からない。あまつさえ、それに『大』なんかついたら余計に分からない。
坂道と裸で抱き合った後、ボクゥは自転車でこっそりと走りに出ることがある。このままやと坂道に甘やかされて、ドロドロに溶けておかしくなってしまいそうで、ボクゥはボクゥを取り戻すためにデローザに乗る。
デローザに乗って、暗い道をぐいぐいと走っていく。
身体に残ってる坂道の感触を全部後ろに振り払っていくように、風を浴びて前へ前へ。息が切れるほどの速度でデローザを駆り立てて、一時間ほど走ったらようやくボクゥの内側から坂道が抜けていく。
けれど、抜けたら抜けたで何だか身体ん中がポッカリしてしまって、ボクゥはデローザを家の方へと向けて、再び走り始める。
ボクゥの布団には、サカミチィが裸ん坊のままで寝ている。
大きな口を開いて、かーかーと寝息を立てているかもしれない。そんなことを思うと、何故か、来る時よりも速いスピードで足が動く。
寝ているサカミチィの顔が見たくなって、一目散に身体が家へと帰ってしまう。
ボクゥはこんな事をしている場合やないのに、
ボクゥは世界に向かって走らなあかんのに
サカミチィに甘やかされて、ボクゥはぐずぐずでふにゃふにゃな駄目人間へと成り下がるのだ。