君のスイッチ 趙はいい男だ。そんなことを言うと恋人の欲目だと言われるかも知れないが、実際にモテるのだからいい男なのだと思う。
仲間といる時や自分以外の人間といる時には、特にそう感じることが多い。
「何、春日くん、俺のこと、じっと見ちゃって」
サバイバー、先ほどまで向こうで仲間と話していた趙が春日の座るカウンター席までやってきて、そう春日の顔を覗き込んだ。
「いや、楽しそうだなと思ってよ」
「混ざれば良かったじゃん」
趙がそう眉を上げるが、春日は小さく首を振った。
趙を遠くから見ていると、近くにいる時よりもその様子がとてもよく分かる。仲間と一緒に楽しそうにしている姿や誰かをからかって子どもみたいに笑っている顔も可愛いし、話し込んでいたりする静かな顔もそれはそれで良くって、改めて俺の男はかっこいいなと惚れ惚れするのだった。
「遠くから趙を見てんのが好きなんだ」
言うと目を少し細くして、趙の表情が変わった。
「俺の、って思ってた?」
甘やかに微笑まれて、カウンターに置いた手に趙の指が絡む。趙の『スイッチ』が変わったのが分かって、こちらの体温も急に上がっていく。
「バレたか」
「それにしても見過ぎだよ。またナンバ辺りにいちゃつくなって怒られるじゃん」
絡められた指を取って、こちらからも握り込む。じんわりと趙の体温も上がっているのが分かった。趙の指が春日の爪を撫でる。
「帰る?」
「そうだな」
みんなでいる時はあんなにかっこいい男が、春日の前では甘い恋人の顔になる。そのスイッチの瞬間が春日を幸福にするのだった。