喚び声 座に刻まれ、魂だけでただそこに在った僕が、君の呼び声に応えたのは何故だったろう。
魂の在り方が好きだった、と言えば、まぁそうだ。召喚に応じるか否かは、縁の媒体でも使わない限りは、サーヴァント側に委ねられているのだから。
ひたすら真っ直ぐに届いた声。僕を呼んでいた訳では無いのだろうけど、その声に応えたくなったのは、他でもない僕だった。
召喚に応じる、と決めると、たちまち僕の魂を光が包む。ああ、召喚されるとこんな感じなのか、と魂だけのぼんやりとした意識の中、感じたのを覚えている。
「やった!召喚成功!」
呼びかけと同じ声がする。
前を見やると、目を輝かせて心底嬉しそうに笑う君がいた。
「やあ、僕の名前はビリー・ザ・キッド。新しめのサーヴァントだけど、役に立つと思うよ。よろしくね」
ひとまず、当たり障りのない自己紹介をしておく。
「ビリー・ザ・キッドかぁ、私でも聞いたことあるな…あ、私はこいとです。召喚に応えてくれてありがとう。貴方のマスターとして、自分なりに頑張って行くので、どうぞよろしくお願いします」
そう言って丁寧に頭を下げる君。
ハキハキと喋る子。率直に述べると、そういう第一印象だった。
ここ、カルデアの召喚システムは、聖杯戦争のそれとは違うらしく、一人のマスターに対して、複数のサーヴァントと契約をするものだと、聖杯からの事前知識を得ていた。
英霊なんて、録なものじゃない。それは座に刻まれている当事者である僕が、一番よく理解しているつもりだ。
中には真っ当な奴も居るのかもしれないけど、大抵は僕のようなロクデナシだと思う。
でも、きっとどのような英霊が召喚されようとも、彼女はこう出迎えるのだろう、そう思った。
自分でも笑ってしまうくらい呆気なくくたばってから一三五年後、生前は考えもしなかった遠い未来、縁もゆかりも無い土地で、仮初の身体と共に、僕は新たな時を刻み始めた。