雪の降る日――。
「千冬ぅ」
「ハイ!」
名前を呼ばれるだけで嬉しい、とでも言いたげに、千冬が満面の笑みを浮かべる。ちょこまかと自分の世話を焼きたがる存在は、飼い主相手にぶんぶん尻尾を振る犬っコロみたいだ。飼った覚えはねえけどなぜだかいつも傍にいる。それが疎ましいと感じることもなくて、いつの間にか傍にいることが当たり前になっていた。
学校でも、外でも、いつだって一歩後ろをついてくる。他のヤツだったら鬱陶しいと遠ざけたかもしれない。実際、オレに取り入ろうとしたバカをのしたことは一度や二度じゃない。だけど、千冬のことだけは気にならなかった。
それは、東京卍會壱番隊隊長場地圭介じゃなく、近所の中学に通う1年3組場地圭介として出会ったせいかもしれない。中学留年なんて言う普通ならありえない状況にクラスの連中すら遠巻きにしていたし教師からも腫れものに障るような扱いを受けていた自分へ声をかけたのは千冬だけだった。丁寧に時間をかけて書いてみたところで、文字の大きさがバラバラな汚なくて読み難い文字で書かれた手紙を見て、間違いを教えてくれたのも千冬だけだった。
3616