本の話 イギリスの首都ロンドンの中心地に建てられたタウンハウスは、『ガーネットジェム』の創設者であるグランマが所有している。
その場所では、救貧院にいた子供や、孤児、労働者階級の人間を集め、ロンドンに出没する吸血鬼を狩る為に日々教育がなされている。
そんな彼等にとっては気の休まらない日々を送る、或る秋の朝。
グランマの計らいで、ガーネットジェムに所属している全員に一週間の余暇が与えられた。
指揮隊として人形の指導を担っているセオドアもその一人。
館の二階の一室を私室にしている彼は、普段の起床時間から三時間も遅れて目を覚ました。
ベッドから起きて閉めきっていたカーテンを開く。
霧は晴れないが、ロンドンの街を見下ろし、働きに出掛ける美しい女性の姿を見届ける───それがセオドアの一日の始まりを示した。
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