俺にお前は殺せない「ごめんなさい」
サギョウ、は、苦しそうに言った。
突如とした吸血鬼の大量発生、サギョウと共に行動できていたのは現場に着くまで。
そこからはそれぞれ対応に追われ見失った、そして俺自身も満身創痍の中、視界の端に入った緑色。
「サギョウ!」
路地裏で蹲っているそこに駆け寄り、上げさせた顔。
覗き込んだ瞳、は──
真紅。
息を呑んだ。
血に染まっている左首筋。
「ごめんなさい」
苦しそうに呟いた、その唇の両端には、尖った、対の牙。
それがこちらへ向くより一瞬早く俺は身を翻して駆けた。サギョウ、は、飛ぶ様に追ってくる。
「吸 血 鬼 になっ、 ちゃ ったぁ ぁぁぁ‼︎、!!」
出来るだけ人の居ない通りを選び、逃げ切れないだけの、敢えて落とした、速度で走る。
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