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    hakoyama_sosaku

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    hakoyama_sosaku

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    黒桐と白城。ポイピクの小説機能の試運転。

    探偵は最後の事件を解決したら旅に出なければならない「いやあ、にしても派手にやられたもんだ。本当に縫わなくていいのかい? 君は確かに人の心がわからないが、痛覚まで死んでるわけじゃない。傷が開けば辛いのは君だよ」
     ベッドに横たわる青年の身体には、大仰に包帯が巻かれている。それもそのはず。青年は昨日刺されたばかりの怪我人だった。凶器が小ぶりなナイフだったとはいえ、明確な殺意を持って刻まれた傷は青年の身に生々しい痕跡を残した。このまま縫わなければ、間違いなく傷跡は最も醜悪な形で残るだろう。
     まるで、彼の携わった最後の事件のように。
    「……うるさい、何度も言わせるな。それに君に口出しする権利はないはずだが」
    「わかってるよ。まさか君が傷跡を残すことに意味を感じるようなロマンチストだったと知って驚いただけだ」
     大袈裟に肩をすくめると、苛立った表情がさらに険しくなったのを感じた。普段より反応が単純なのは、彼の傷が目に見えるもの以外にもあることの証左だろう。
    「……君は少し、この街に長く住みすぎたね」
    「何が言いたい」
    「君の実力ならK大は受かってるだろう。友人として最後のアドバイスだ。ここから出て、もう二度と戻らないことをお勧めするよ」
     病院に行くことを選ばず、今や仇敵たる僕の家で応急処置を受けているのも、結局は血縁者へ連絡が行くのが面倒だからだと僕は知っている。
    「僕は春から親父殿の持ちアパートに住む予定なんだが、ちょうど空き部屋が一つあってね。これも今回の件の詫びとして扱ってあげてもいい」
    「口止めと監視の間違いだろう」
    「なんでも構わないさ、返事は?」

    「ということで、私がこいつをこの町へ連れてきたんだ。この町でこれと出会った君に感謝されることはあっても、そうやってあからさまに警戒される謂れはないと思うんだが……」
    「じゃあ黒桐先生の怪我に、あなたは関係ないんですか?」
    「そりゃあせっかくの機会だ、もちろん私も手を入れたさ! ゲームというのは互いに全力を出してこそのものだ。当然最悪のケースでは誰かが死んだかもしれないが、そうはならなかったから問題無いだろう?」
     助手くんが明らかに警戒度を上げる。社会性のかけらもない男の癖に、全くどこでこんな番犬を拾ってきたんだか。そう考えると本人から彼との出会いを聞いたことはなかった。隠している様子もなかったから、いつも通り覚えていないんだろう。
    「だから君たちを引き合わせるのは嫌だったんだ」
     コーヒーを不味そうに飲んでいた男、黒桐礼二が立ち上がる。そのままの動作で封筒をカウンターに置いた。中身を確認すると、今月分の家賃がきっちりと収められている。確認を終えて顔を上げた頃には、カランコロンと心地よい音を立てて扉が開いていた。慌てて追いかけた助手くんと入れ違いに小柄な少女が入って来る。その姿を認めた途端、私は表情を切り替える。
    「明智くん、よく来たね。その様子だと、何かまた面倒に巻き込まれたのかな? まあ、積もる話は座ってから聞こう。ご注文はコーヒーで良かったかい」
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