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    hakoyama_sosaku

    @hakoyama_sosaku

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    hakoyama_sosaku

    MOURNING善知鳥と竜胆くん。
    「竜胆くんは膝枕をしてくれる」「STR14の膝はやわらかそう」という雑談から生まれたものなので、それ以外は全部捏造。ネタバレもなし。
    なんでもない日 帝都を騒がすような大事件もなければ、閑古鳥の鳴く事務所に訳有りの依頼人が飛び込んでくることもない、じつに平和な昼下がりのことである。
     普段であればあまり意味のない会話や、何度目かもわからない小言に事欠かないビルの一室に、ぱちん、ぱちんと小気味良く響く音があった。
    「なあ、実」
     善知鳥は今日も今日とて来客用の二人掛けソファに寝転がっていた。しかし普段ならすぐに飛んでくる小言も、今日に限っては決してないことを善知鳥は知っている。
     返事がないのを理解して、善知鳥はしぶしぶ目を開けた。目の前に、いや頭上にあるのは善知鳥の手を取り、握り鋏で爪を切る幼馴染の姿だ。客用の笑顔を仕舞い込んで、真剣そのものの瞳で刃物を持つその姿は、彼の前職を知る者ならどれほど難しい患者を受け持っているのかと勘違いするだろう。残念ながら、彼が向き合っているのは箸と銃以外はろくに握らない三十男の手である。ソファの皮張りにはない温度を頭で受け止めながら、善知鳥はもう一度声をかけた。
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