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    Seaetana

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    Seaetana

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    地獄のような艦これについて考えてみた結果長くなった

    『年若い提督と、老練な将官との会話』始まりは確かに深海棲艦の出現だった。
    知っての通り奴らは先の大戦で沈んだ艦の怨念が具現化したものだ。
    だが、我らが今まさに戦っているのは、何十年も前に沈み今や海の底で朽ちるのを待つだけの艦などではない。

    ──どこから話そうか。
    深海棲艦の出現後、世界は混乱を極めた。
    沿岸部の町々は襲われ、破壊され、人々は捕食された。そして海そのものによる陸地の浸食も始まった。これらの事態に可及的速やかに対処しなければならなかった我々には、手段を選んでいる時間的余裕も、物的余裕も一切与えられなかった。
    そして混乱の中、秘密裏に少女達が集められた。挺身隊という名で彼女達が集められた理由、それは彼女達が事態を打開する切り札になり得るというものだった。
    彼女達は『艦船としての記憶』と『人類を守るという目的』を植え付けられた。そして、注げるだけの技術の粋をもって深海棲艦に対抗しうる兵器へと改造された。彼女達の意志とは関係なく。
    もう分かっただろう。
    艦娘とは、私達の業の成れの果てなのだ。

    艦娘達は、期待通り深海棲艦への打開策足り得た。我々は狂喜乱舞し、各地に鎮守府を組織し、艦娘による反抗戦へと打って出た。
    始めのうちこそ戦況は芳しくなかったものの、次第に戦果もあがるようになっていった。

    ──ところが、しばらくすると異変が起きた。

    知っての通り、艦娘は傷つけば中破大破し、修復が追いつかなければ轟沈する。
    その轟沈した艦娘が深海棲艦の中にいる。
    そう言い出す提督が次から次へと現れたのだ。

    曰く、轟沈時に身につけていた服飾品と同じものを身に着けた深海棲艦が出た。
    曰く、こちらへ向け、己の名を呼んだ。

    確たる証拠は無かった。だが、見過ごせる話でもなかった。
    我々はその轟沈した艦娘であると疑われる1個体の鹵獲に成功し、解析した。結果、それは紛れもなく元艦娘であると判明した。

    ──だが、これは吉報である、と。
    その時の我々は断じた。断じてしまった。

    何故ならば、深海棲艦はどこからともなく湧いてくるというのに、艦娘は消耗品だったからだ。沈んでしまえば、補充にはまた罪もない少女の犠牲が必要となる。

    ──分かっている。だが続きを聞いてほしい。それで全てが分かるはずだ。

    吉報であると断じた理由。それは、元艦娘の深海棲艦であればサルベージが可能であると判明したからだ。元から湧いていた深海棲艦は身体の仕組みも組織もまるで我々の手の及ぶ範疇ではない。ところが、元艦娘の深海棲艦には我々がつぎ込んだ技術の痕跡が至るところに残っていた。これを元に、再び艦娘として蘇らせることができると──技術部から報告が上がったときには皆歓声を上げたものだ。
    これでもう少女を生贄にする必要は無くなったのだと。
    愚かだった。とても、愚かだった。

    早速、元艦娘たちのサルベージが始まった。
    ところが問題が起きた。彼女たちの記憶だ。
    サルベージ後の彼女達には轟沈時の記憶があった。そして、深海棲艦となってからの記憶も。
    サルベージから目覚めた彼女達は絶望した。再びあの痛みと恐怖の待つかもしれない戦場へ赴き、いっときは己の同胞であったものたちを殺さねばならないという現実に。
    錯乱し、暴れるものも出た。我々は持てる限りの力でそれらを制圧し、都合の悪いことは忘れさせようと、彼女たちの記憶を抹消した。
    記憶がなくなった彼女たちは、当初の予定通り正義の艦娘として、人類の味方として振る舞った。

    ─だが、記憶は完全には消えていなかったのだ。
    記憶を消された彼女達が再び海の底へ還ると、以前の記憶までもが蘇ることが判明した。
    それどころか、深海棲艦達から伝えられたのか、自らが元は一人の人間であったという事実までも知ってしまったようだ。
    そうなれば、彼女達が、自らを生贄にし、死ぬことも許さず、兵器として使い潰そうとした我々へどういった感情を向けるか──想像するまでもない。
    憎しみは今や積もり積もって海を埋め尽くしているだろう。

    ──それでも我々は止まることはできない。

    我々には守らねばならない国が、国民が、己の家族がいる。

    艦娘のサルベージ時の事故を減らすため、妖精と呼ばれる自律型ドローンを用いたサルベージ方法が確立された。
    君たちはドロップと呼んでいるようだね。
    そうだ。彼女たちは今までどこかの海で沈み、そのまま水底に還ることも許されなかった、もとはただの少女だった人間だ。

    そして深海棲艦とよばれる者たちも──艦の怨念とやらはどれほどの割合残っているのか、もはや考えたくもない。

    分かっただろう。私達が戦っているのは今や何十年も前の負の遺産などではない。私達が戦っている相手は、我々自身の手で生み出してしまった怨嗟そのものなのだ。
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