お正月とお節の話「もう5日目になるよこれ・・・。」
お正月のお節をこたつに入りながら二人で突いて、雑渡がうんざりしながら伊作に文句を垂れた。
伊作はそれにため息をついてやれやれと仕草をする。
「おせちは5日目が美味しいんですよ。わかってませんね雑渡さん。」
「嘘でしょ、それ絶対嘘でしょ。悪くなってるよ多分これ。」
「匂いも味も大丈夫です。僕が言うんだから安心してください。」
お節に入ってる黒豆、田作り、なます、昆布巻きがお皿に乗っていて、
二人でちまちまと食べている。
雑渡が二度目のため息をついて「飽きた」と呟いた。
「もう〜、もう少しで食べ終わりますよ!」
「さすがに5日同じおかずは飽きた…。」
「もう少し頑張ってください!」
やっと雑渡が自分の分の昆布巻きを食べ終わるとゆっくり箸を置いて「あとは任した。」
とコタツからそそくさと出て行った。
「あ!雑渡さん!逃げないで!」
「逃げるんじゃないよ。避難だよ。コンビニ行ってくるね。」
寒い外に出るためにチェスターフィールドコートを着て、玄関に置いてあるマスクをつけて颯爽と出て行く。
「裏切り者〜〜〜〜〜!」
と雑渡が出て行った後に伊作の叫びが響いた。
「うう、雑渡さんのバカ…。」
もぐもぐとやっと最後まで食べ終わって、ごろりと横になる。
流石に続けて出すのはマズかったかな?
今年は里帰りが難しく、初めて二人でゆっくり過ごせるのが嬉しくて、お節を買ってみたが、やはり数が多いものは残ってしまいぼちぼち食べていた訳だ。
「買わない方が良かったかなぁ。」
自分も飽きていたが、お節料理の意味を知っているからこそ二人で最後まで食べたかったのに。
しばらくすると玄関から「ただいまー」と雑渡が帰ってきた。
部屋に入り空の皿を見て安堵する雑渡。
「食べてくれたんだね、ありがとうー」
手にはなにか小さい袋をぶら下げていた。
伊作は寝っ転がりながらふてぶてしい顔で雑渡に答える。
「いいえ、誰かさんが逃げたから仕方なく食べました。」
「んふふ、ごめんね。はいこれ。」
「ひっ!つめた!」
伊作のほっぺに袋がつけられた。
冷たい冷気にびっくりする。
すぐに離されて机の上に置かれると、袋からうっすら見慣れたパッケージが見える。
「カップアイス!!」
「ご褒美。」
「甘いの食べたかったんです!」
嬉しそうに起き上がって伊作は袋からアイスを2つ取り出して、木のスプーンを上にちょこんと置いた。
その間に雑渡は手洗いうがい、消毒を済ませて「さむ」と言いながらこたつに入る。
「ありがとうございます!」
「いいよ、食べようか。」
伊作は怒ってもいい。が、雑渡がお詫びのアイスを買ってきてのでもういいのだろう。
やっとお節から解放されて、甘いアイスを頬張れる幸せを感じながら二人で食べた。