Puberties 後日談「……っていうのを思い出したんだけどさあ」
ジークは珈琲が並々と注がれたマグカップをライナーの前に置き、すぐに口許に手を翳すようにして言った。込み上げる笑みを抑えきれないらしい。
ジークが言い終わらぬうちに、ライナーは顔を両手で覆い、机の空いたところへ突っ伏した。転倒を免れたマグがガタンと揺れる。
「俺いま……めちゃくちゃ恥ずかしいです……」
顔から火が出るとはこのことだ。そもそも休憩時に思い出話として気軽に話す内容でもないだろう。あの頃はただただ英雄になりたくて、それ以外はすべて瑣末なことだったのだ。
「かわいかったよね〜ちっこいライナー。なーーーんにも知らなくて」
「もうほんとにやめてください……羞恥で……死にます……」
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