Recent Search
    Create an account to secretly follow the author.
    Sign Up, Sign In

    choko_bonbon

    @choko_bonbon

    メモ代わりの、あらすじズラズラ。
    練習絵。などなど。

    ☆quiet follow Send AirSkeb request Yell with Emoji 🌷 💜 🌼 💚
    POIPOI 33

    choko_bonbon

    ☆quiet follow

    高専時代の五と七
    夏さんも喋ります。

    五七ワンライ「告白」「なぁなぁ、なんか面白い話しろよ」
    一年生に、実習を兼ねて、先輩の仕事ぶりを見せる。
    それ自体はとてもいいことだと思った。ついて行くのが、この、子供っぽくて尊敬どころのなく。されど経験や力に関しては既に一級品の、五条でなければ。
    「ほら、はやく。迎えきちまうだろ」
    「その迎えが遅いから、暇なんでしょうに」
    暇だから面白い話をして欲しい。なら、迎えがすぐにも到着すれば、暇は消滅する。であるのに、迎えが来るからはやくと急かされる意味が、七海には到底、理解不能であった。
    「いいからはやく。面白い話しろよ」
    経験に天と地ほどの差がある故に、見学と言っているのに今日一日、まったく五条の動きについて行けず。現場でほぼ置いてけぼりを喰らった七海は、これまでになくイラついていた。
    例え相手が、外見に一目ぼれしてしまって、内面を知って絶望し。それでも、子供っぽいところから目を離せず、いつの間にやら気になる存在として再浮上。今では立派に心をかき乱してくれる、七海にとって想い馳せる好いた存在。であったとしても、だ。
    だから血迷った。
    世迷言が口をついて出てしまった。
    すこしでも面白い奴と思われたかった欲が、ついつい思考回路を鈍らせてしまった。
    一瞬で良いから、最強の男の興味を引いてみたくなって。
    「実は私、好きな人がいるんです」
    そう口にしてしまっていた。

    「七海に、好きな奴……?」
    その言葉の次には、矢継ぎ早のからかいが飛ぶだろうと見越して。そうっと耳に手を当てる算段をしていたが、現実では、隣の男はむっと押し黙り。訝しんだ七海の側から質問をする羽目になった。
    「大丈夫、ですか?」
    サングラスの奥の瞳が真剣で、眉間による皺も、真面目な色を表している。なにか難しい話に繋がるのか。こんな貧弱な、呪術師なりかけの分際で一丁前に好きな人だなんて、という言葉を想像していたのに。
    手の平を五条の眼前で振ってみて、やっと男がこちらに視線をくれる。ついでに質問も。
    「それ、俺らの知ってる奴?」
    「そ、うですね」
    「つうことは、年上か」
    「えぇ、まぁ」
    といっても一歳だけだし。知っているかどうかで言えば、本人、ですらあるのに。そこまで告げるつもりなかった七海の口は、嘘を織り交ぜる隙を見失って、すらすらと本当のことを喋ってしまっていた。
    「どんな奴なの。なんか……見た目の印象とか」
    「ぇ、あ、ええと……髪の色が綺麗、です。目も、綺麗で。最初はそこに惹かれました」
    またぺらぺらと、なんてことを。自分を叱責するが、嘘を言うのも五条に申し訳ない気がして、好きな気持ちには確固たる自信があって七海は、語尾まではっきりと音にした。
    「ふ~ん。で、強いの? そいつ。オマエがいくら好きでも、死んだ、ら……元も子もねぇっつうか」
    「強い方ですよ。経験もある。私では到底追いつけないでしょう」
    胸が痛んだ。なにせ、どれだけ好いたところで、そもそも男同士。
    そのうえ、五条の傍には既に、最強と名高い友がいる。あれの間に割って入るなんて器用な芸当、七海にはお手上げだ。きっと蕾のままで散る運命の恋心。吐露できることが嬉しくて、きいてくれるのが本人であるのが、鼻の奥をツンと痛ませてくる。どうか、いまだけは、我儘にならせてほしい。
    普段の軽薄な口調を何処へやら。五条はその後も、どうして好きになったのか、どこで出会ったのか、と。しつこいと言うより繊細に尋ねてくる。
    七海は彼の口車にのるかたちで、自分でも驚くほどぺらぺらと。五条本人に、募る彼への恋慕の気持ちを正直に吐露し続け。
    帰りの車中では、花と咲く前に無残に散る運命の恋心を抱え。窓外の景色が、どこかうら寂しいものと感じられた。

    翌日のことだった。
    「あ、七海。丁度良いところに」
    高専内の廊下。見上げれば、まぁ尊敬できる方の先輩。珍しく一人の夏油が、にこやかに片手を上げて七海を呼び止めた。
    「夏油さん、おはようございます」
    「おはよう七海」
    駆け足で近寄ると、彼は元から笑っているのに近しい顔を、更にゆったり弛ませた。まるで、ペットショップのガラス向こうにいる、子犬か子猫を見るような。他人ごとの慈しみに溢れた表情は、すこし居心地が悪い。
    「あの、なにか……」
    これから灰原と任務なんです。告げると彼は、それはすまない、と悪びれもせず笑った。
    「ちょっと、注意喚起。というか、やさしい先輩からの忠告」
    やさしい、という点には大いに疑問が残るとして。いくつもの現場を収めてきた先輩からの言葉に、七海は姿勢を正す。なにか、前日までの任務の態度ややり方で注意をもらうのだろうかと思って、緊張に咥内の唾液を飲みこんだ。
    「えぇ……と、なんだったっけかな。年上で、髪色が珍しく?」
    「……なんの、話です?」
    顎に手をやり悩む姿勢の、夏油の言いたいことが全く見当つかずに詰め寄った。それを無視して彼は、その後も謎の単語を羅列する。
    「自分では到底追いつけない、経験と力を持っている。でも、近づけたら嬉しいし、そのための努力をしている。七海のことは、良くも悪くも思っていないはず……の、優しいと言うよりは、子供っぽい人、なんだよね?」
    「ですから、すみません、なんの話でしょうか」
    呪霊に対するノウハウや、闘い方における改善点を諭されるとばかり思っていたので。まったく理解が追い付かない。もうすこし、こちらにもわかる言葉で話してほしい。まさか、彼と二人で一緒を自他共に認める、おちゃらけた先輩でないのだから。七海には、夏油の言葉の裏など読めそうになく。眉間にしわ寄せ、首を傾げた。
    「そのままの意味、なんだけどな。昨日のことなのに憶えていないのかい? あぁ。その人は記憶力が良くて困ることがある、なんて言っていたのだっけ。たしかに細かいことまで、よく覚えているよね、あいつは」
    彼の言った言葉を最初から思い出してみた。
    脳内で単語を反芻する最中、七海の脳内に小爆発が起こった。
    細く切れ長の瞳がこれでもかと見開かれ。海色を湛えた緑の瞳が、零れそうなほど剥かれて左右に揺れる。ついには、異国の血を色濃く受け継いだ白い肌身の、発展途上の高い鼻先に赤が灯される。見る間に、産毛の揃う頬の張り出しや、金の髪で彩られた耳にもその色が宿って。七海の顔があわく色づいてしまう。
    「そ、の……話、は、どこ、で」
    「悟だよ」
    あれほど、言わないでと言ったのに。いや、言ってない? そこの記憶は不確かだが。言いふらすだなんて酷過ぎる。
    親友だから。俺たち最強だから。隠し事はしないし出来ない。
    そう言い放つ五条の顔が、見て来たかのように鮮明に頭に思い浮かぶ。いますぐにでもその余裕の表情を、掻き回して、めちゃくちゃにしてやりたかった。
    「しくじったね、七海。あいつ、止めないとマズイと思うな。皆に訊いて回ってる」
    「は? なに、な、なにを、ですか?」
    「だから……七海よりは年上の高専関係者で。綺麗な髪色と瞳を持っていて、七海とそれなりに親しく。子供っぽいのに力や経験があって、七海が憧れているらしい人のこと」
    だから、憧れてなどいない。
    現実逃避気味に考えたところで、結果は散々だ。それに、夏油は今、皆に訊いて回っている、と言ったか。皆とは誰だ。夏油に言うだけならまだしも。あの人のことだ、それとなく、なんて手ぬるい訊き方は望み薄。誰彼構わず、正面切って訊いているのに違いない。
    ざっと全身の血が抜ける心地に苛まれる。赤さが瞬時に引いた。
    「さて、七海。悟が今どこにいるか知りたいだろう。なんなら、今日の任務は誰かに変わって貰えないかと、思っているはずだ」
    頭の内側をすっかり見透かされたようでビクついてしまった。声を上げて笑われ、図星、という仕草表情をとった事を恥じ入る。それ以上の羞恥に駆られていたおかげで、頬の赤らみが既にみせてあったことが、不幸中の幸いだ。
    「今日の任務、私が変わってあげようか。最近は悟に任せてばかりで鈍っていたから……頼まれたら、かわってあげても良いよ」
    思わず、肩にかけたバッグの持ち手より手を離し。両手で夏油の制服の胸元を、縋りつくように握りしめていた。ぎゅっと埋まる五指の必死さを見て、彼は言葉を紡がずとも鷹揚に頷いてくれる。
    「一限目が座学だから。教室だ。硝子に詰め寄ってるところだと思うよ」
    けらけらと笑う男に、礼を言えばいいのやら、恨み言を言えばいいのやら。それとも一番は、これ以上の被害が出る前に、口止めを懇願すべきか。迷う七海の頭に、すこし高い位置からぽんぽんと手の平が乗せられる。昨日も、こんなことをされたような。叶うといいな、と、優しい声は、正しい記憶だろうか。
    「あぁ見えて、好きな子のことになると手一杯らしくてね。あの悟があんなに焦っていたのも爆笑ものなら。どっからどうきいても、お前のことだろ。って話を、誰なんだって必死に訊いて来るのに、笑いを堪えるのが大変だったよ」
    「あの、この話、は」
    「私も愉しませてもらったから、内緒にしておく。でも、任務をかわる代わり、大胆な告白のその後のことは、帰ったらゆっくり聞かせてね」
    さぁ、お行きよ。
    言葉より雄弁に、肩を掴まれくるりと方向転換を。とん、と圧してくる手の平が優しい。今度こそ夏油の顔に、表情通りの心を感じた。
    「すみません、失礼します」
    じゃっかじゃっか、バッグを煩く鳴らしながら向かう教室は、想い人の待つところ。
    なんでそんなに鈍感でいられるのだ。
    憤慨は逆恨み同様。それでいて、五条に思いを伝えて、見事玉砕するところを夏油に楽しみにされてしまっているのだと思うと。傷をわざわざ自分で拡げては、塩まで塗り込む格好が無様である。
    それでもなんとか、ぜぇぜぇ、はぁはぁ、荒い息と共に二年生の教室の、扉をガラガラと開けて。
    「え、んなの。五条じゃん。オマエじゃん。は? 七海、オマエの事好きなの? 趣味わる」
    「……あ、」
    家入の声で、七海の全身から力が抜けおちた。
    ぽてんと尻もちをついた格好を、教室内に居た五条と家入に振り向かれ。絞首台に立つ罪人の気持ちはこんなものだろうと、手に取るように理解し。
    絶望にくれて白黒となった七海の視界に。一点、真っ赤な。それこそ夏油に図星をさされた際の七海の赤さを優に超した、首まで赤らめた五条の色が映る。

    あ、そう言えば。夏油さん。好きな子の事になると、五条さんでも手一杯。と言っていたっけ。それは、その、好きな人というのは。

    今更ながら考え至ったことに呆ける七海の前に。件の、サングラスでも隠しきれないほど真っ赤になった五条がやってくる。彼の顔は、怒っているような安心しているような。
    「呪術師やってて、好きな奴に先に死なれるなんてクッソ悲しいこと経験させたくないからって、心配してやってたのに。こんの……回りくどいんだよ。ちゃんと好きって言え、ば~か。俺の方がオマエのこと好きだわ、ボケ」
    子供っぽすぎる告白をぶちかましてこられて唖然とした。
    それに、家入は涙を零して笑い。教室の前で何を揉めている、と怒りかけていた夜蛾はあんぐりと口を開けている。
    「すみません、私の、好きな人は……実は、」
    名前は五条の肩口に吸いこまれる。五条が、これ以上、羞恥に喘ぐ表情を見せたくなくて、七海を抱きしめて来たのだ。その力強さに、すっと瞼をおろし。五条にだけ聞こえる声で囁く。
    「私は、五条さん、アナタが好きなんです」
    Tap to full screen .Repost is prohibited
    ❤❤☺☺❤☺❤☺☺☺☺💕☺💖💖💖☺☺☺☺☺☺💯👍👍☺☺☺💖☺👍😍💖☺☺☺☺💖💖💖☺☺☺☺☺💘💘💘💘💖❤💖💞❤❤❤☺☺☺
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    recommended works